ZOZO創業者、前澤友作氏が手金80億円をアパレル企業に投資した理由

河合 拓
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終わってみれば、たったの11億の価値しかつかないレナウンをどう総括するか

アパレルイメージ
たったの11億円の価値しかつかないレナウンをどう総括すべきか(写真はイメージ)

 ドラマ「ハゲタカ」で、バルクセールというものがあった。ファンドマネージャ鷲津は、三葉銀行の持つ不良債権銘柄を徹底して調べ上げ、「価値ゼロ」と1円の値段をつけたシーンである。思えば、レナウンも絶頂期は3000億円近くまで売上を上げた日本を代表する優良企業だった。その後、中国企業に売却され、破綻に追い込まれたわけだが、911日の繊研新聞に寄れば、「シンプルライフ」、「エレメントオブシンプルライフ」は、たったの1億円である。「ダーバン」とあわせ、小泉アパレルがつけた価格は11億円。

 この数十年で企業価値はたったの11億円になったわけである。あのドラマは単なる「ドラマ」ではなかったことになる。この数十年の同社の「価値毀損」は金額換算すれば凄まじい。こうした事例は他人事ではない。私は、「レナウン破綻は序章」と題し、米国で次々と破綻に追い込まれたアパレル企業の事例を紹介しこの余波は早晩日本にやってくると書いた。

 旅行、飲食、アパレルの三大業種は、「コロナ倒産」により、9月の段階で500社の企業が破綻に追い込まれ、日本の失業率は3%となっている。

 コロナの世界的流行は予知できなかった悲劇だと思う。しかし、コロナの前にアパレル業界は増税、暖冬、DXへの過剰投資により破綻の淵に追い込まれていた。この時点で業績が悪化しているアパレル企業、繊維商社には共通の特徴がある。彼らは戦略と称し、難解か抽象的で的が絞られていない、いわば具体性のない改革プランを現場や株主への説明に使っていた。曰く、

  1. デジタル化の推進 ECの拡大
  2. 仕入先の集約による調達コストの低減・直貿(商社はずし)の拡大
  3. 海外展開

 といったところだ。

 1についていえば、そもそも、勝ち筋もなくECにでてもAmazonや楽天、ヤフーに勝てるはずもない。中には酷い事例があり、「客が違うから」などといって、これらのモールに出店を繰り返し顧客を奪われていった企業もあった。私はある再建企業に入ったとき、経営者が「これからはECだ!」と叫んでいたことに対し、現場は、「ECなんかに出たら楽天やAmazonにやられる」と陰で言っていた。私は、「なぜ、もっと表で議論をしないのか」と現場にいったのだが、彼らは、「それは経営が決めることだから」といっていた。ようは、業績不振企業の特徴は、戦略は常に赤提灯でしか語られない、ということである。経営が与党とすれば、現場は、対案のない批判だけを繰り返す野党となっていた。

 2についても、調達コスト(企画原価率) 2-30%以下になったいま、仮にベンダーから、調達コストに占めるベンダーの利益率の半分を削減しても上代比率でいえば3%程度であり、本質的なバリューチェーン全体の流通改革をしなければ、競争力はなくなりプロパー消化率が下がってポイントやクーポンなどの叩き売りが始まって、際限の無い相対的原価高に襲われる。「商社をいくらはすしても原価は下がらない」という声を聞くが、それは、アパレル企業の上代が、それ以上に下がっているからだ。

 3などは論外で、今まで海外で勝てなかったのに、なぜこれから勝てるようになるのか、今までと何が違い、なぜそこに勝ち筋があるのかという説明が見えない。高付加価値戦略について、「Made in Japanだ」と声高に叫んだアパレルもいた。しかし、実際やってみると、もはや日本に作り場はなく、まともにMDさえ組めない状況でだった。現場をバカにしている経営者は、実は現場にバカにされているという様を幾度も見てきた。

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