競争激化の米EC市場、大手プレイヤーが続々強化する「ミドルマイル」とは、その狙いは?
アマゾンも配送拠点1000カ所設置へ
EC最大手のアマゾン(Amazon.com)も、物流の結節点として、消費者の近くに立地する小型の配送拠点を新たに1000カ所設置する計画を発表した。
「この計画は、彼らの物流システムにミドルマイルの要素を組み込むことを意味していると考えられる」と高島氏は話す。拠点数としては、ウォルマートのミドルマイル物流を担う拠点が全米で展開する約4700店舗であるのと比べると少数であるが、「実際に運用した成果次第で、拡充していくことを想定しているものと考えられる」(高島氏)。
また、成長途上にあるネットスーパー業態でもミドルマイル物流強化の動きが見られる。直近では、米ネットスーパー最大手フレッシュ・ダイレクト(FreshDirect)が、ブロンクスの大型物流センターを拠点とする物流の結節点として、ワシントンDC近郊にMFCを複数設置することを発表した。
1998年創業で、2002年からニューヨーク州近郊で事業を展開しているフレッシュ・ダイレクト。同社はイスラエル発祥でニューヨークに本社がある物流ロボット開発企業ファブリック(Fabric)と提携し、ピッキングやパッキングなどの配送準備作業を効率化するシステムを導入している。
フレッシュ・ダイレクトも、MFC設置のねらいは2時間の配送サービスの強化にあるとしており、サービスの迅速性を高めることで急拡大するニーズに対応する構えだ。
高島氏は「EC専業企業が、実店舗リテーラーに学ぶ形でミドルマイル物流を導入し、配送の迅速性を獲得できれば、実店舗リテーラーの優位性は相対化され、両者の競合は一段と厳しさを増していくだろう」と予想する。EC専業と実店舗リテーラーの競争が激化した先では、「価格」と「品揃え」に、「迅速性」を加えた、ECの“総合力”が問われることになりそうだ。
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