#15 過疎地に店を出すほど利益が増える?小売業の物流完全自前化がもたらす多大な恩恵
セコマの先見の明 セブンもない過疎地に店を作れる理由
このような小売業による物流の完全自前化の取り組みには先達がいます。コンビニエンスストア「セイコーマート」を運営するセコマです。
創業者・故赤尾昭彦氏の「SKUが少ないコンビニは自前の物流システムを持った方が有利」との経営判断で、97年から03年にかけ釧路、旭川、函館、稚内、札幌、帯広の順に自社物流センターを建設(運営は子会社のセイコーフレッシュフーズ)。北海道全域にいち早く自前の物流網を構築しました。
物流を外部委託している大手コンビニチェーンは、商品カテゴリーごとに複数のトラックを使って店舗配送を行うのが普通です。これに対し、物流を完全自前化したセコマは、1台のトラックに多様なカテゴリーの商品を混載して店舗に運ぶことが可能になっています。
人口の多い大都市圏に多数の店舗を展開するビジネスモデルでは、物流を専門会社に任せ、商品別に何台かに分けて配送する方が確かに合理的です。過疎地に店舗が点在するセコマが同じやり方を続けていたら、委託費がかさむばかりで、とても店舗網を維持できなかったはずです。
04年には、配送トラックの空きスペースを使って各店から梱包用の段ボールを回収し、古紙業者に販売して利益を上げるといったサイドビジネスを早くも手がけていました。赤尾氏の先見の明には、今更ながら感心させられます。
セコマは現在、道内179市町村中、173市町村に出店しており、人口カバー率は99.8%にも及んでいます。生活必需品を買える店はセイコーマート以外にはないという町村すらあることは、連載5回目で紹介した通りです。
もしセコマが物流を外部委託していたら、過疎地に新規出店し、配送距離が延びるたびに委託費も増えていき、やはりビジネスとして成り立たなかったでしょう。実際には、道内全域に構築した自前の配送網を調整するだけで対応が可能なのです。過疎地での事業展開がコストの増加要因にはならず、むしろ物流の効率化や収益性向上に寄与するという点はコープさっぽろと同じです。
チェーンストアを小売業としての側面のみで論評する時代は終わりを迎えようとしているのかもしれません。