最終回 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さん、在任4年の実績と後継者選び
家田さんが、元日営業をしなかった理由
家田さんの真骨頂は、従業員に分かりやすく簡易な言葉を紡いで方針を語るところにある。怒声は上げないが言葉には衣を着せずにズケズケ言う。
「ユニーには、希望退職する者もヘッドハンティングされる者もいないんだから働け!」。一般的な会社なら従業員は嫌気がさし、辞表を提出する者がいても不思議ではない。
そうならないのは、返す刀で「慣れた仕事というのはやっていてラクなもの。俺だってユニーにいればラク極まりない。『お前が入ってくる前からやっているんだ。だから若造はダメなんだ』で大抵の話は終わってしまうから。けれども、他社に移れば、また雑巾がけからやり直しになる。だから『社歴も実力のうち』だ」と「辞めてはいけない」というメッセージを送ったりしているからだ。
一連の言葉は、従業員のモチベーションを昂揚させ、成長力の源に昇華した。
家田さんは、言葉については相当自信を持っていた。
「俺が間に合うのは口だけ」「口だけでは絶対負けん」と豪語し、従業員にも「俺は屁理屈と膏薬はどこへでも付くという信念をもっている」と話していたこともある。
「経営=言葉」であるとするなら、家田さんは生まれつきの経営者だったといえよう。
もうひとつ。従業員のモチベーションがあがる家田さんの対応は元日営業についてだ。「俺は1月1日から働きたくない。だから休む」ということで、リストラ中であるにもかかわらず、ユニーは元日を休業にした。
「元日営業で売上は取れるかもしれないが、現場のモラルは低下する。元日営業は、1社で独占できればうま味もあるけれども恒常化・日常化した時には、あまり意味がない」。