最終回 ユニー“中興の祖” 家田美智雄さん、在任4年の実績と後継者選び
「人間の頭数と仕事の量には何の関係もない」
だから執行態度は厳しかった。
けれども、量的にできない仕事をやれとは言わなかった自負はある。
実際、コマンドを出した従業員に対しては、「もしキャパシティがオーバーしているならば、『できない』と言ってくれ」と必ず付け添えた。
家田さんは、もし「できない」と申請する者が出てきたのならば、①できる人に代える、②代えても無理なら増員、という2段ステップを構えていた。
しかし家田さんが社長であった4年間で「量的にできない」と申し出た管理職は1人もいなかった。
家田さんは、「人間の頭数と仕事の量には何の関係もないんですよ」と言い放ち、「ちょっと重たい荷物を持たせて責任と権限とステータスを与えれば人間は動くんです」と人のモチベーションを上げることの重要性を後に語っている。
家田さんが社員に語りかけてきたのは、「最後の最後まで生き残ろう」という難しいものではない。「(数ある小売企業の)真ん中よりも後で潰れよう」と達成できそうな目標を設定し、ここでもモチベーションアップを図っていた。
ただ、従業員をその気にさせるためには、会社に対するロイヤルティがないといけない。
家田さんは「ロイヤルティとは、潰れないという安心感だ」と考えていた。それでも「会社とは潰れる」ものだから、「俺はお前たちを食わせるために必死になってやる」と言い続け、常に従業員を鼓舞激励した。
ユニーでは、年に2回程度、グループ企業のトップと労働組合が出席し、会社の将来など様々なことを話し合う経営協議会が開かれていた。
家田さんが乞われて出席した時には、「こんな厳しい時代にどうしたらいいのか?」という質問を受けた。
「俺は八卦見じゃないから将来のことは分からない。でも1つ言えるのは、いざというときに全社員が『1割~2割の『給与ダウンはオーケー』と言ってくれれば潰れないから心配するな」と回答している。
潰れる宿命を背負う会社という生き物を潰さないためにはどうすればいいかを常にシミュレーションしていたことがうかがえる。
家田さんは言う。「商売というのはやり方次第だ」と――。
追い詰められたところからでも、従業員のモチベーションをあげ、工夫を繰り返しているうちにうまくいくようになる。
そんな中で、一部のユニーの社員には既述のような成功体験が生まれた。
それが社内で共有化され、やがて部署を超え、全社的に相乗効果をもたらし、好循環になり、ユニー再生の原動力になった。