西友社長兼CEO リオネル・デスクリー
昨年6月、中期事業計画「スパーク2022」を策定した西友(東京都)。地域に密着しながら「よりよいものをより安く」を実現する「ローカル・バリュー・リテーラー」になることを目標に取り組みを進める同社だが、新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態にあっても安定した成長を続けている。昨年3月に西友のトップに就任したリオネル・デスクリー社長兼CEOに、スパーク2022の進捗と今後の成長戦略について聞いた。
スパーク2022の進捗は順調
──2019年3月のCEO就任から間もなく、同年6月に中期事業計画「スパーク2022」を策定されました。ここまでの進捗はいかがですか。
デスクリー スパーク2022は、アソシエイト(従業員)やお取引先さま、お客さまなどあらゆる方向から意見を伺い策定したものです。そのうえで、西友が地域に密着し、その地域によりよい商品をより安く提供する「ローカル・バリュー・リテーラー」になることをゴールに定めました。
取り組みの柱は大きく4つあって、①差別化されたバリュー・プロポジション(顧客が商品や買物に感じる価値)の向上、②生鮮食品と総菜へのさらなる注力、③オムニチャネル戦略の加速、そしてウォルマートグループの根幹である④EDLP(エブリデー・ロープライス)を実現するEDLC(エブリデー・ローコスト)のさらなる推進です。
策定から1年以上が経ちましたが、ここまでの結果には私自身非常に満足しています。業績面では業界平均を上回る成長を見せていますし、顧客満足度の指標も改善を続けています。
──そうしたなかで新型コロナウイルスの影響が予想以上に長期化しています。どのような取り組みを進めていますか。
デスクリー 感染拡大が深刻化し始めた段階で、3つのことを優先しようと決めました。1つは、アソシエイトを守ること。2つめは、地域のライフラインとしての役割を果たし続けるということです。その一環として、競合他社が時短営業に踏み切るなか、西友では24時間営業の継続を決めました。そして3つめが、中期事業計画「スパーク2022」の取り組みを止めることなく進めていくことです。
また、コロナ禍では、ウォルマートグループの一員であることのメリットをあらためて実感しています。とくに感染拡大が深刻化し始めたころはマスクや消毒液などの調達でウォルマートのネットワークを活用できましたし、感染対策やテレワークなど従業員の働き方改革についても、他国市場でのベストプラクティスを共有できたことは大きかったです。
価格政策と地域密着の取り組みに注力
──コロナ禍で消費行動は大きく変化しています。どのような点について着目していますか。
デスクリー 注視すべきことはいくつかあると考えています。価格に対する感度や、鮮度・品質に求めるレベルの高まり、地域密着の重要性、店舗の清潔さ・安全性の担保、テクノロジーを駆使した買物体験の提供などが挙げられるでしょう。
このうち、価格感度の高まりに対しては、「どこよりも安く」を実現するための投資を引き続き進めていきます。同時に、プライベートブランド(PB)の開発も加速させる考えで、今期は前期と比較して2倍の数の新商品を投入する予定です。
──価格政策については、その活動の原資となるEDLC(エブリデー・ローコスト)の取り組みが重要になります。
デスクリー そのとおりです。価格戦略を強化するなかでは、お客さまのニーズに基づいて、カテゴリーによってはSKUを最適化することも必要です。加えて、店舗作業の効率化も求められます。すでにケース陳列も増やしていますし、セミセルフ・フルセルフレジなどへの投資も進めていきます。もちろん店舗のほか、物流拠点でも自動化技術などの導入を進めていく考えです。
これらの投資が、最終的には価格につながっていきます。ただ間違えてはならないのは、ゴールは価格を下げることではなく、価格に対する価値をどれだけ提供できるかにあるということです。価格は最も重要な要素の1つですが、そのほかにも、おいしい総菜、すばらしい鮮度の生鮮食品、わずらわしさの欠片もない買物体験、地域に密着した店づくりなどで、総合的な価値を打ち出すことが重要です。
──スパーク2022でも「ローカル・バリュー・リテーラー」になることをミッションとして掲げていますが、地域密着を重視している背景にはどのような考えがあるのでしょうか。
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