破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#5 オペレーション改革 ターゲットは家賃とプロパー消化率向上、破棄損の撲滅

2020/09/15 05:49
河合 拓

プロパー消化率は最重要KPI

 企業は、利益計画立案(コロナの時代では売上計画は無意味)の段階でプロパー消化率100%、オフ率0%、残品率0%を狙うべきだ。もはや「作り場」はなくなったかもしれないが、企画原価率は上記がどこまでぶれるのかによって、そして、企業がどの程度の付加価値を商品に植え込むかによって決める。

 なぜなら、プロパー消化率をしっかり追いかければ、企画原価率=事業損益となるからだ。売上至上主義をすて、適切な値付けを行って数年かけて売り切る会計制度と組み合わせれば、「期末の叩き売り」による帳尻合わせは減少し、プロパー消化率こそが利益計画を達成する最重要KPIとなることが分かるはずだ。利益率こそ、成熟社会における最重要KPIなのである。

 「業界をあげて、セールの時期を揃えればよい」などという意見もあるが、そんなことをやれば、真っ先にフライングをした企業が換金率を上げ、「一人儲け」するだけだ。よく考えてもらいたい。2万社もある市場が、一斉に足並みを揃えてセール時期を合わせるはずなどない。

 今のアパレルの最大の過ちは、最初から「プロパー消化率50%、オフ率30%、残品率5%で、企画原価率35%」という具合に、値引きと売れ残りを前提に利益計画を立てていることにある。そうではなく、数年かけて商品を売り切り、値引きを換金変数とせず、消費者に対する購買インセンティブであるという逆発想で利用すれば、ユニクロのように週末だけ値引きをするなど、SPAならではの柔軟な製販統合が可能となる。そして、オフ率が限りなくゼロに近ければ営業利益率で10%以上をたたき出すことも可能だ。実際、ワークマンやハニーズが高収益をたたき出している理由も説明がつく。

 家賃については、自社EC比率を高める、大きなブランドの場合、家賃が固定費である直営比率を高め、変動費である卸ビジネスは極力辞めるなどの工夫が必要だ。しかし、私が見る限り、低収益企業はこのあたりが逆になっているケースが散見される。ここまで読まれておわかりのように、二枚目の最大の論点は、「今までの教科書を捨てること」である。

 デジタル技術は、誰もが熱狂するも、これらをつかって圧倒的な業績向上に寄与したという話は聞いたことがない。しかし、それは、「実感が持てない」という先の発言が全てを表している「他責」が諸悪の根源で、自らが将来を創り上げてゆくという考えが組織の末端に染みつかなければ企業の再建などおぼつかない。

「実感」というのは、過去の経験から来るのでなく、将来のビジョンから来るのだ。未来が見えない企業、組織に先端技術を使いこなすことは難しい。ここまで、テクニカルノックダウンを打ち込まれたアパレル業界にとって、それがたとえ「改善」であっても、甘さは許されない状況にきていることは、アパレル企業当人達が一番わかっているはずだろう。

 さて、一枚目で3年間売上が下がっても黒字を維持できるほどのコスト削減を行った企業は、この時点で営業利益率10%を目指すべきである。そして、それでも利益がでない場合は、本社経費を思い切ってオフバランスすべきだろう。今は、BPO(Business Process Outsourcing)など、人事、総務、経理をアウトソーシングする経営手法もある。恐ろしい話だと思うかもしれないが、デジタル化によるオプティマイゼーション(全体効率向上)というのは、こういうことなのだ。

 この二枚目で企業は高収益企業となり、いよいよ、おおいなる戦略を持って三枚目にうつることになる。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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