三幸製菓 佐藤元保CEOが語る「購買行動の変化に 合わせた商品開発 」

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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消費者の購買行動が変化

──キャラクターを使った訴求法とはユニークですね。他方、売場で商品を効果的に打ち出すような活動はありますか。

佐藤 商品のパッケージの手法を大幅に見直し、お客さまに強くアピールしようと準備を進めています。コロナ禍の状況にあっては、目玉商品で集客する特売売場が減りつつあります。反対に、重要性が増しているのが定番売場。毎日安さを訴えかけるEDLP(エブリデー・ロープライス)で提供するスタイルが主流になってきています。そのなか、普通に陳列していてもお客さまの目に留まるようなパッケージをめざし試行錯誤しています。

──具体的にはどのような施策ですか。

佐藤 これまで商品パッケージは、開発担当者の感覚でデザインを決めていました。今、進めているのは、売場におけるお客さまの目線やその動きを踏まえた、科学的なアプローチを活用したパッケージづくり。人間の眼球の動きを測定する「アイトラッキング」(視線計測)という手法を用い、お客さまの目線が集まる部分に伝えたいキャッチコピーや情報を配置しようとしています。

 そうしてリニューアルしたのが定番商品「粒より小餅」で、すでに店頭に並んでいます。旧デザインにはお客さまが商品を選ぶ際、決して重要とはいえないコピーが記載されていました。それを改め、味やおいしさなどを表現した文字を、読みやすさも考慮しながら配置しています。まだ始まったばかりの取り組みですが、今後、売場での商品の見え方は変わっていくはずです。

──新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、米菓の商品政策も大きく変化しているということですね。

佐藤 その通りです。消費者の購買行動は以前と比べ、確実に様変わりしました。できるだけ外出を避けるため、1回あたりの買い物の量は増える傾向にあります。そのなか必需品ではない米菓を買ってもらうためには、買物袋のなかで極力、大きなスペースを占拠しないようにしなければなりません。これまでのようにかさ高いと敬遠されるでしょうし、商品の小容量化、スリム化は進めるべき重要なテーマです。

 一方、コロナ禍のもと、個包装は衛生的であり支持される形態だと見ています。このようにお客さまの購買行動も視野に入れ、順次、商品を見直していきます。

3つのビジョンを策定

──新商品開発についてはいかに考えていますか。

佐藤 20~30歳代の若い女性にも手に取ってもらえるような、新機軸を取り入れた商品ラインアップを充実します。詳細はまだ明らかにできませんが、従来の米菓の枠を超えた新商品を投入しようと画策しているところです。店頭のどこに並べたらいいのかさえ判断がつかないような斬新な商品をめざしています。

──さて佐藤CEOが経営トップとして采配を振るにあたり、自らに課すミッションは何でしょう。

佐藤 当社は「幸せのシーンを一人でも多くの人へ。」を企業理念に掲げています。そのなか「三つの幸せ」として「お客様に幸せ」「お取引様に幸せ」「会社と社員の幸せ」を常に考えてきました。

 私はそれをさらに具体的な行動指針とするため、新しい経営方針として「良品廉価を次のステップへ」というテーマを打ち出しています。そのもとで「従業員満足度」「顧客満足度」「ブランドの強化」という3つのビジョンを策定し、実現に向け、日々努力しているところです。

 良品廉価の「良品」とは、ただおいしさだけを意味するものではありません。食べやすさ、形状、包装形態などさまざまな要素があります。コロナ禍が続く難しい時代にあり、世の中の価値観、消費者の嗜好も大きく変わっています。そのなか既存のお客さまを大切にしながら、新たな顧客層を開拓できるような施策に取り組んでいく所存です。

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