企業再建の極意#1 初年度から売上アップをめざす再建計画が愚かな理由

2020/08/18 05:55
河合 拓

今回から数回にわたって、私が小売業だけで50社以上を再建してきた実績から独自に体系化した「企業再建の手法」を解説したいと思う。企業再建は「一枚目」「二枚目」、そして「三枚目」という表現を使って、紙めくりのように順番に沿って、企業再建のステップを着実に実行していくことが重要だ。各ステップで行うべきこと、注意すべきことを具体的に記した。コロナ禍による未曾有の経済状況の中、否応なしに「企業再建」に関わらざるを得ない人が増えるだろう。正しい企業再建の手法を伝えることを通じて、一社でも多くの企業が再建される、その一助になればと願っている。

Gearstd / istock
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米国発の小売業連鎖倒産 その余波、日本にも

 私は自らを「再建屋」と呼んでいる。企業が多くの努力をしたが厳しい状況が変わらないとき、「傭兵」として呼ばれることが多いのだが、「時すでに遅し。なぜ、もっと早く呼んでくれなかったのか」ということが幾度もあった。残された資金はごくわずか。そんなクライアントの再建を任されると、私を送り出す会社からもクライアントからも応援されず、毎日が針のむしろに座る感覚でがむしゃらに仕事をすることになる。地方のホテルの窓から一人で外を見るとき、「一体私は誰のためにやっているのだろうか」と自問自答を繰り返す。これが、再生の仕事の実態と実感である。

 再建の仕事は、「サラリーマンのやる仕事ではないのでは」と思いつつも、一方で「この経験やスキルは、特定の個人の秘伝のタレのように隠しておいてはならない」とも思う。その気持ちが、この「企業再建の手法」を開示するきっかけになったのかもしれない。

 もちろん再建の現場に入れば、そんなセンチメンタリズムは許さない。すでに米国から始まった小売企業の連鎖倒産。ビクトリアズシークレット、J.クルー、ブルックスブラザーズ、フォーエバー21、無印良品米国法人(MUJI USA)、ディーン&デルーカ、百貨店でいえば、J.C.ペニー、ニーマン・マーカスなど、名門企業ばかりである。こうした名前を挙げれば切りが無いほどで、その余波が早晩日本を襲うことは想像に難くない。

 日本でも、レナウンの経営破綻から、セシルマクビーの全店閉鎖、オンワードの700店舗閉店など、決して景気の良い話は聞かない。そんなとき「再建屋」としての腕が鳴りはするものの、理由の分からぬ身震いを感じることもある。再生の仕事は、全人格をかけた、まさに、映画「三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実」のような、一人で数千人の人間を相手に激しい議論や葛藤を繰り返す日々が続く。

 トランスフォーム、チェンジマネジメント、PMIなど横文字にすれば響きはよいが、組織の文化や繰り返される批判のための批判に、決して自分の利益のためでなく、批判を繰り返す方達その人のために闘いを挑んでいるむなしさをお感じになられれば序章としては十分だ。 

 さて、前置きが長くなったが、本稿は、「アパレル企業の事業再建手法」を可能な限り具体的に書き綴ったものである。そこには、一社でも多くの企業が窮地を救われる一助になればという思いがある。今こそ、筆をとる時だと思った次第である。

 

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