ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営4 消費者が「浪費は不必要」に気づいた今、すべきこと

2020/08/13 05:55
    西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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    「浪費」について消費者が気づいてしまったこと

     ところがこの自粛期間、消費者は気づいてしまった。高価な時計、高額な車、宝飾、アクセサリーなどすべて「これ、要らないものだったのか」「無くても暮らしていけるじゃん」と。 
     休業期間中、唯一営業していたスーパーマーケットとドラッグストアが売上好調を維持したのは、提供するものが「浪費」では無く、「消費」であったためだ。生きていくため生活するために必要な基礎消費ということだったのだ。

     では、ショッピングセンターや百貨店などの商業施設はどうか。実はここで売られている大半のものは基礎消費の対象ではなく、「浪費」に該当する洋服、アクセサリー、雑貨、外食などで溢れている。

     それを踏まえ、ユニクロが売れる理由を考えてみたい。今、洋服は、「ユニクロと、ユニクロ以外に大別される」と言われるほどユニクロの一強が目立つ。これは、この消費と浪費の間(はざま)に位置しているからなのだ。

     ユニクロは、ある人には基礎消費、ある人には今年の新作、ある人には機能性商品と顧客のカテゴリーごとにそれぞれ捉え方が異なり、多くの国民をカバーする。これがユニクロの強みなのである。

     

    「良い浪費」=楽しさや豊かさを提供できているか?

     では、「浪費」はいけないのものか。答えは否だ。なぜなら、美味しいスイーツを食べると幸せになり、かわいいアクセサリーを身に着けると気持ちはウキウキする。 
     好きな人との食事は楽しいし、ヨガで汗を流せばすっきりする。大きなスクリーンで映画を観れば感動も大きいし、野球だって球場で見れば興奮も大きい。
     「浪費」とは、国民の毎日を楽しく生活を豊かにする最大の手段であり、これは「良い浪費」と呼ばれる。

     浪費は、店舗やショッピングセンターや百貨店だけに該当するものでは無い。旅行、興行、施設、車、家電などすべての事業と事業者に共通する。 
     「良い浪費」を促すこと。これが最も重要なのだ。

     ところが、今、ショッピングセンターや百貨店では、前年比を追い求め、
    ・売らんがための販売促進と接客力強化
    ・客数と客単価のアップ
    ・「何が売れるか」「どうやって売るか」
     こんなことばかり追い求め、自らでつまらない売場を作ってはいないだろうか。良い浪費を促せていないのだ。

     まとめとして、アフターコロナにショッピングセンター、百貨店に求められることを提言したい。 
     ショッピングセンターや百貨店は、国民の4つの支出「貯蓄、投資、消費、浪費」のうち、「消費」だけを考えてはいないだろうか。
     コロナ禍で売上が悪いと嘆いているだけでは何も始まらない。アフターコロナは、生活者の4つの支出を真摯に受け止めること、これが市場が縮小する日本においてショッピングセンターや百貨店に課される大きな課題である。

     

    西山貴仁
    株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

    東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

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