2019年度の上場衣料品専門チェーンの売上ランキングは、上位10社のうち増収を果たしたのは4社にとどまった。前年度に続き厳しい状況が続く中、2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、各社は大打撃を受けている。強い逆風も吹き荒れる衣料品専門店業界。前年度の売上ランキングを振り返っていこう。
強さ見せつけたファストリ
上場衣料品専門店の売上ランキング首位は、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(山口県)。2019年8月期(連結)の売上高は2兆2905億円(対前期比7.5%増)、営業利益は2579億円(同9.1%増)と増収・営業増益で、売上・利益ともに過去最高を更新した。
事業別の売上高をみてみると、競争激化などを要因に、国内ユニクロ事業は営業減益となったものの、海外ユニクロ事業とジーユー事業がけん引役となり、全体業績を押し上げた。
2位のしまむら(埼玉県)は、前期に続いて低迷状態から抜け出せず、20年2月期業績(連結)では、売上高が5219億円(同4.4%減)、営業利益は229億円(同9.7%減)と3期連続の減収・営業減益に沈んだ。
しまむらは今期(21年2月期)第1四半期も業績低迷が続いていたが、第2四半期に入ってからは、既存店売上高は対前年同月比27%増、7月も同9.1%増と業績が業績回復の兆しも見え始めている。
同社は7月の好調について、「リラクシングウエア、インテリア関連商品が前月に続いて好調だった」と説明。長引く巣篭もり消費の恩恵を受けたとみられるが、このまま回復基調をたどるのか。先行きの動向から目が離せない。
紳士服専門チェーンはコロナで大打撃
ランキング上位企業のうち、苦戦ぶりが際立ったのが、紳士服専門店チェーンだ。
紳士服専門店チェーン最大手、青山商事(広島県)の2020年3月期(連結)の売上高は2176億円(対前期比13.0%減)、営業利益8億円(同94.4%減)だった。AOKIホールディングス(神奈川県)も20年3月期連結業績が営業収益1802億円(同7.6%減)営業利益66億円(同50.7%減)と、そろって減収・大幅減益となっている。
クールビスによりスーツを着る時間が短縮化されるなど、オフィスファッションのカジュアル化が進展しており、近年の紳士服専門チェーン各社は販売不振に苦しんでいる。ここに追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響で卒業式や入学式、企業の入社式などが中止となり、スーツ需要が低迷に拍車をかけている。青山商事のビジネスウェア事業の売上高は同16.9%減となっている。
唯一気を吐いたのは話題のあのチェーン
ランキング上位20社までの大手~中堅クラスが軒並み苦戦するなかで、唯一気を吐いたのが9位のワークマン(東京都)だ。同社の20年3月期(単独)の営業総収入は923億円(同37.8%増)、営業利益は191億円(同41.7%増)と、売上・利益ともに驚異の伸び率を記録した。
同社の好業績を牽引するのが、業務用向け商品で蓄積してきた機能性衣料のノウハウを取り入れたプライベートブランド(PB)の販売好調だ。同社におけるPB売上高は同70%増と大幅に伸長しており、売上全体に占めるPB比率は前期に比べ7.3ポイント上昇し、51.4%となった。PB比率が伸びたことにより、利益もかさ上げされている。
2020年度の衣料専門店も引き続き厳しい状況が続きそうだ。とくに駅ビルやショッピングセンター(SC)などを主戦場とする衣料専門店は、新型コロナウイルスの感染拡大で営業自粛や営業短縮を迫られており、足元の業績は軒並み低迷している。海外で事業展開するチェーンも大打撃を受けている。この危機に、各社はどう対応すべきか? 衣料品専門店チェーン各社は、間違いなく正念場を迎えている。