ウィズコロナの食品商品政策 「ファミリーストア」をめざす理由と進め方 

日本リテイリングセンター ディレクター 渥美六雄
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食品編●「個食対応」への偏りを正し今こそ「ファミリーストア」をめざす時

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛要請のなかでも、食品スーパー(SM)は政府の方針により人々の生活を支える店だとみなされ、営業を継続した。しかしそこで明らかになったのは、現在のSMの商品政策では、ファミリー層の食事を充足するには商品や提案が不十分であるということだ。今後も自宅で食卓を囲む機会が多くなると想定される今、各社は個食対応に偏った品揃えを改めるべきである。

「個食対応」に傾倒し家族向け商品が少ない

日本のスーパーの店内
日本のSMはこれまでの個食対応に偏重した考え方を見直し、ファミリーストアの本質に目を向けるべきである

 新型コロナウイルス感染拡大の状況下において、SM業界は平時よりも多くの品物を求めて買物するお客で賑わった。この間、各社で取り上げられた話題といえば、労働力の維持や感染防止のための衛生管理など運営上の対策が中心である。商品面では品切れ・欠品とその集荷くらいしか議論されていない。

 しかし、家庭の食生活の要望を満たす便利な買物先としてSMが期待に応えるには、それらの課題に対処するだけでは万全ではない。人々に不安と不自由が強いられるこの社会危機のなかで、自由に安心して、豊かで楽しい食生活を送れるかはSMの商品提案にかかっている。その観点でSM各社は反省しなければなるまい。

 先進的なSMは、自宅で家族揃って食事をとる機会が大幅に増えることを見越して、例年の春休み中や連休期間の販売動向を参考に、いち早く品揃えの点検と集荷対策を行った。そうした企業では、実際の商品の動きが想定を大きく外れたという印象はなかったはずである。

 だが、だからといって、現状の品揃えが人々の暮らしに十分だと言える根拠にはならない。お客は非常時であるからと、仕方なく不便な売場でも我慢しているだけだ。

 給食や外食に代わって毎日の食事を自宅でとる機会が増えた人にとって、SMに用意されている商品の選択肢は、実はそう多くない。現状では、複数人で構成される家族が揃って楽しめるメニューが不足している。一方で

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