2020年度のアパレル業界 栄える企業と滅びる企業を分かつものは?

河合 拓
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アパレル商品の最大の弱点

 Zホールディングスの傘下に入ったZOZO3月、静かにZOZOMAT (足のサイズを計測し、その人にあった靴を提案するデバイス)をリリースした。

  桑田真澄の息子のMattに紹介させるなど、「だじゃれ」などやっている場合では無いはずだが、私は早々にZOZOMATを取りよせ足形を計測してシューズを買った。念のため、妻と娘にも同じことをさせたのだが、彼女たちは総じて「サイズが大きい」と言う。私も自分の足サイズは25-25.5なのだが、ZOZOMATには26と表示されている。私たち家族はZOZOMATのいうとおりにしたのだが、推奨される靴はブカブカだった。

  「不完全な技術で消費者を実験台にするのはいかがなものか」と感じたし、「ここが徹底した消費者起点のビジネスを展開するAmazonとの違いなのだろう」と思ったのもつかのま、私の妻が「すごい!」と叫んだ。観れば、ZOZOで数年前に買った商品がポップアップで表示され、「ZOZOで数年前に買った、この商品は、当社が1200円でお買い上げいたします」と出ていたのである。

  私は、某誌の取材で、「サステナブルビジネス」について意見を求められ、「今の、オフプライスストアは本質的な問題解決になっておらず、アパレルは相変わらず大量生産を繰り返し、余剰在庫が余る前提で商品を買い上げたたき売っている」とのべた。

 たとえば、アパレル業界は、「プロパー消化率50%、オフ率30%、残品率5%で企画原価率35%」などのように年度目標を立てるが、この目標は、「値引き販売」を前提に目標値を作っていることにお気づきだろうか。本来であれば、プロパー消化率100%、オフ率0、残品率0」とすべきだろう。

  「そんなことができるのか」、と言う人もいるだろうが、ユニクロ、ワークマン、そして、ハニーズなどの高収益企業はみなそうしている。商品を定番品に絞り、トレンドはVMDや商品の組み合わせで表現し、トレンド商品は少量生産にして絶対数を足りなくして欠品を追いかけない売り切り御免型とし、ライトオフ期間を5年以上にすればよい。また、ダイナミックプライスは、こうしたゼロベース発想ができない技術屋には正しい導入はできず、企業業績を悪化させることは述べたとおりだ。日本の風物詩となった「8月と1月の大セール」など直ちに辞め、ユニクロがやっているように、消費者が買い物に来る毎週末に値引きを行うなどの工夫をすべきだ。SPA(製造小売)である理由は、自ら店頭コントロールができるところにあるのだから、少しは工夫をすべきである。そうすれば、オフ率は0-5%以内に収まる。

  アパレル商品の最大の弱点は、「定価で購買した瞬間に価値がゼロになる」ということだ。私自身、10万円以上もするスーツやダウンを「買取業者」にもっていって査定をしてもらった経験が何度もあるが、ほとんどが「100円」、よくて「300円」程度である。ここが、アパレル商品が売れない、消費者が長く着て元をとろうとする理由なのである。この提言はZOZOによって既に稼働しており、彼らが運営する二次流通市場などで販売されている。ZOZOはアパレルではないので仕入れはしていないが、ブランドがこれをやればアパレル商品はもっと売れるだろう。細かな「部分」ばかりに目を向けず、このように大局的な視座からバリューチェーン全体を見て、その構造を理解しなければ本質は見えてこない。

 

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