アフターコロナの小売像その5 ラストワンマイル攻防戦

森谷信雄(ライター)
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コロナ禍の米国では買物代行サービスが台頭

 米国では、コロナ禍を背景に買物代行サービスのインスタカートが業績を伸ばしている。インスカートは業態の垣根を超え、多くの小売業と提携を結んでおり、北米5500か所以上の地域で事業を展開。米国内世帯の85%をカバーしている。

 コロナ禍で利用件数も急増しているという。フォーブス日本語版によると、インスタカートの利用者は、新型コロナウイルス感染症が拡大した4月の第1週と第2週でそれぞれ7億ドル(約725億円)の買物をしたそうだ。

 インスタカートは、食品スーパーだけでなく、ドラッグストアやペットショップなどとも提携関係にあるのが強みだ。インスタカートは日本ではまだサービスを展開していないが、ダブルフロンティア(東京都)の「ツイディ」のように買物代行サービスを展開する事業者も台頭しはじめている。今後、買物代行サービスの裾野が拡大していく可能性は決して低くない。

 ラストワンマイルを埋めるサービスは、商品を運ぶだけでは儲からないため、広告収入などにより利益をねん出しているのが現状だ。だが、今後は蓄積した消費者の購買データを活用することで、高い収益性が期待できると言われている。

 たとえば、「Z地区に住むAさんは毎週何曜日にこの商品を注文する」ということがわかれば、こうした購買行動に合わせたマーケティングや販売促進を展開することができる。こうした情報はメーカーも喉から手が出るほどほしい情報だろう。

 今後は、自宅配送サービスの仕組みをいちはやく確立し、より多くの購買データを蓄積したプレイヤーが台頭する時代に突入するかもしれない。その過程では、ラストワンマイルを制するところが大きく存在感を発揮することになりそうだ。

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