アフターコロナの小売像その4 「ダークストア」への期待

森谷信雄(ライター)
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「ダークストア」はネットスーパー市場拡大のカギ?

 ただ、冒頭のネットスーパーの混雑状況をみてもわかるように、店頭起点型のネットスーパーでは今後の需要増加に対応できない可能性が高い。

 店頭の商品を従業員がピックアップし、検品して配達するというモデルは、少ない初期投資でサービスを開始できるというのが利点だ。だが、こうした人海戦術型のモデルでは、キャパシティは限られてくる。

 そんななか、今後のネットスーパー市場拡大のカギとなると観測されているのが、「ダークストア」だ。ダークストアとは、ネットスーパー専用の物流センター。通常の店舗と同様に商品が並べられているものの、一般客が入店することはない。

 海外でしばしば見られるダークストア。国内ではイトーヨーカ堂(東京都)が2015年からダークストアを展開している。東京都荒川区にある「ネットスーパー西日暮里店」では、店頭起点型のネットスーパーの1日当たり受注件数が400件であるのに対し、1日最大2000件を受注できるという(筆者取材当時、現在は受注件数がさらに増えている可能性もある)。配送範囲も、店舗を中心とした近隣地域だけでなく、より広域となっている。

ダークストア型ネットスーパーが続々

 ダークストアがあることにより、ネットスーパーを展開する自社店舗を補完する役割も期待できる。今後は集客力がない不採算店をダークストアに転換して活用することも考えられるだろう。

 米アマゾンでは傘下の食品スーパー、ホールフーズの既存店をダークストア化したり、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外でオープン予定だった食品スーパーの新業態店を一時的にダークストアとして稼働したりするなどの動きが観測されている。

 一方、国内小売最大手のイオン(千葉県)は2021年から英ネットスーパー大手、オカドと協業したネットスーパーを本格展開する。オカドのネットスーパーは店頭起点型ではなく、店舗を持たない倉庫型のサービスだ。イオンではオカドとの提携を契機に、2030年をめどにネットスーパー事業の売上高を6000億円に引き上げる構想を打ち出している。

 ダークストアは実店舗が不要であり、既存のプレイヤー以外の異業種からの参入も想定される。「いつの間にかダークストアに実店舗の売上高を奪われていた」という事態にもなりかねない。今のうちからダークストア活用、ダークストア対策を考えておく必要がありそうだ。

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