一流コンサルタントが教える、コロナ解決のための「問題解決思考」と解決策

河合 拓
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 感染者の増加停止と、経済困窮者の救済、どちらを優先すべきか?

 メディアは「いかに、感染拡大と経済安定を求めるか、そのバランスが求められている」などと報道をしているが、それは違う。

 問題解決というのは、常にシングルディレクション(一つにしぼりこむこと)だ。ダメな経営者ほど、現場に複数の指示を出す。「どちらかを捨てろ」、といっているのではなく、問題解決の因果関係と構造を理解し、どこに再注力するかという戦略的判断(選択と集中)を行えということを言っている

 今、日本人に突きつけられた課題は大きく分けて2つある。

  一つは、感染者の増加を防ぐこと。つまり、「Stay home」である。本稿を書いている54日、緊急事態宣言が5月末まで延長されることが決まった。その際「新しい生活様式」を提案するというが、論点設定がズレていると思う。これは第二次世界大戦時、本来は戦争を早期に終結すべきことに注力すべきだったのに、「欲しがりません勝つまでは」と、真面目な国民に本土を焼き尽くされるまで追い込んだときの政策と本質的に違わないように見える。

  二つ目は、止まっている経済困窮者に対して国が補填をするというものだ。しかし、これも、アパレル業界だけでいえば、平均すれば年商10億円から100億円程度の会社が2万社近くもあり、1ヶ月で1社あたり3000万から3億円のキャッシュが流出しているという実態からすれば、補填金額の桁が冗談かと思うほど異なっている。中小企業の救済になっていないのだ。

全国百貨店の19年売上高は2.2%減、消費増税の影響続く
衣料品のEC化率が10%しかないので、全体の10%でしか売れない。百貨店はさらに厳しい情勢だ 写真:ロイター/Toru Hanai

 つまり、この重要な2つの課題の対策は、どちらも中途半端、結果的にコロナ対策も後手にまわっている。このままでは、暖冬でテクニカルノックアウトを食らったアパレル企業は、あと3ヶ月と持たないだろう。秋頃には医療崩壊でなく産業崩壊が起きる。すでに、彼らは、春夏物は仕入れをしており、回収しなければ資金ショートを起こしてしまう。衣料品の日本のEC率は売上の10%しかないという事実を無視した政策により、全体の10%しかないチャネルでしか売ることしかできない。この結果、3月に論考を書いていたときに40%の売上減少だった百貨店は、すでに6~70%の売上ダウンになっている。百貨店というのは、私が再三提言していたように、Webを使ったオムニチャネルはあやまった戦略的であるということは過去の論考で説明したとおりである。百貨店のECで売れているのは、「お歳暮」と「おせち料理」だけだ。だから、販売チャネルがECに限定された瞬間に足腰がたたないほどのアッパーカットを食らうことになるのだ。

  こうした状況下、論理的な問題解決のアプローチを使えば、今、我々がすべきことはハッキリする。問題解決というのは、常に、現象に対する対処療法でなく、原因の根元の息の根をとめることなのだ。コロナのケースで言えば、最大の原因は、コロナの感染を拡大させている感染者なのだ。

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