#13 「不要不急の店」じゃない! 北海道の過疎地の生活を支えるホームセンター

北海道新聞:浜中 淳
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人手の必要な食品スーパー業態が出店できない過疎地の救世主として注目されている小型ホームセンター、ホーマックニコット(北海道当別町の太美店)
人手の必要な食品スーパー業態が出店できない過疎地の救世主として注目されている小型ホームセンター、ホーマックニコット(北海道当別町の太美店)

衣食住全て!過疎地の暮らしを守る「ホーマックニコット」

 最近のDCMホーマックは、北海道の過疎地の暮らしを守る存在としても注目されています。一例が、子会社のホーマックニコットが昨年9月に室蘭市白鳥台地区にオープンした「ホーマックニコット白鳥台店」です。

 室蘭の中心市街地から10キロ離れた高台にある白鳥台地区は、同市が工業都市として栄えていた1960年代に工場労働者らのベッドタウンとして宅地開発されました。しかし高度成長期の終焉に伴うマチの衰退と少子高齢化で、85年に1万3000人いた居住者は15年には7300人にまで激減。18年暮れに地域唯一のスーパーが閉店し、文字通り「陸の孤島」になった。こうした実情が北海道新聞で報道されたのをきっかけに、ホーマックニコットが新規出店に名乗りを上げたのです。開業1カ月の売り上げは、当初予想の1.5倍に達したといいます。

 函館発祥の金物店・ツルヤを前身とする同社は、人口の少ない町村部を狙って1000㎡クラスの小型ホームセンターを展開するユニークな企業として知られ、03年にホーマックの傘下に入りました。現在は北海道・東北を中心に104店を展開しています。

「過疎地の救世主」との期待を集めているのは、ホームセンターでありながら、食品の品ぞろえを強化している点にあります。例えば、17年オープンした阿寒店(釧路市阿寒町)は、売場の3分の1を食品が占め、青果、精肉、鮮魚の生鮮3品や日配品の充実ぶりが目を引きます。

 こうした戦略を取る背景には、北海道の過疎化に既存の食品スーパーが対応しきれなくなっているという事情があります。当連載の7回目で詳述したように、アークス、コープさっぽろ、イオン北海道による「3極寡占化」は、地方で暮らしていても、札幌と同じ商品を同じ価格で買える「ご利益」をもたらしました。

 半面、食品スーパーが高度化しすぎた「弊害」も目に付くようになった。3大グループが主力展開する店舗面積15002000㎡のスーパースーパーマーケット(SSM)がペイするには、半径25キロ圏内に1万人以上の人口が必要ですが、過疎化が進む北海道では、この条件を満たせない地域が急速に広がっているのです。これらのSSMは、生鮮3品や総菜を店内加工し「つくりたて」を提供するのが大きな売りになっていますが、その加工に携わる働き手の確保も難しい。今や3大グループの新規出店は頭打ちと言っていい状況です

  これに対し、ホーマックニコットは全日食チェーンに加盟し、生鮮売り場への商品供給と運営指導を受ける態勢を取っています。生鮮加工のための設備や人材を持つ必要がなく、食品に比べて粗利益率の高いホームセンター部門で利益を稼げるため、過疎地に積極出店できるわけです。

 ホーマックは06年にカーマ(現DCMカーマ)、ダイキ(現DCMダイキ)との3社統合によってDCMホールディングスを設立して以来、ホームセンター業界最大手の座を守ってきました。今年3月、そのDCMホールディングスの新社長に石黒氏の長男の靖規氏が就きました。

  3社統合を主導した前田氏が取引先の不祥事をきっかけにわずか1年で退任して以降、カーマ出身の久田宗弘氏が社長を務めてきましたが、13年ぶりにホーマック出身者が経営トップに立ったことになります。新型コロナウイルスがまん延し、将来への不安が広がっているこの時期だからこそ、伝統の生まじめさと顧客本位の姿勢を貫き、消費者の暮らしを支えていってもらいたいものです。

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