本当の敵はユニクロ!?苛烈なアフターコロナのアパレル業界の世界

河合 拓
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すでに、アジアの後進国になっている日本

「中国人の給与は日本人の1/20だから、彼らを使えば安くものづくりができる」というのは今は昔。現代は中国人が日本企業の立て直し(鴻海によるシャープの事例)や、経営者の更迭も実行する(中国山東如意集団によるレナウンの事例)。声高に「日本人は優秀だ!」など空に向かって叫んでも、現実は、日本は凋落の道を歩んでいることに疑いない。野戦病院と化したM&Aマーケットには、次々と乱脈経営を行った結果、半身不随になったアパレルが担ぎ込まれてくる。

 つまり、アパレル業界も「医療崩壊」を起こしているが、見方を変えれば、不謹慎かもしれないが、「新陳代謝」が起きているともいえる。

 こうしたなか、私は30年の業務経験と50社の企業再建の体験から、粛々と「アフターコロナ」の準備をしている。具体的には、「本気でこの業界と心中しよう」という覚悟を持っている人、組織と緩やかなネットワークを組んで「アフターコロナ」の絵を描いているのである。

 私は、評論家でも無ければ、調査レポートを渡す「ペーパー・コンサルタント」でもない。企業の中に入りハンズオンと呼ばれるやり方で自らが戦略立案やオペレーションをやってみせ、成果にコミットしながら企業変革を現場とともに伴走するスタイルを続けている。ここまでやらねば企業は変わらないからだ。調査報告書に数千万円を払っても、未知の世界に仮説をたて、真っ白い紙に戦略絵を描ける力がなければ、デジタルツールなどのハイテクツールもタダの箱。アフターコロナの準備にはならないことは企業も分かってきた。

アフターコロナの世界1
繊維商社はプラットフォーマーだけが生き残る

 私の出自である繊維商社に対して、私は3年前から最後のブルーオーシャンといわれるPLM (Produt Lifecycle Management )を主軸とした「デジタルSPA」の提案を行ってきた。だが、この3年で私の提言を実現化した商社は数社のみであり、そのうち、私の描いた「CPFR (シーファー)」理論 (バリューチェーン全体が情報を共有し合い、全体最適を実現するコンセプト) ベースの戦略に沿った業態改革をした企業はたったの二社である。

  その他は、相も変わらず我田引水発想による「個別最適」、つまり、「バリューチェーン全体の中で、自社が儲かればよい」という発想で、本質的な競争力を生み出すビジネスプラットフォームを構築するものではない。これは、業務関係者がデジタルに対してあまりに無知であること、加えて、デジタル関係者も業務に対して無知であること。さらに、この両者を結合した総合戦略を白紙のホワイトボードに描ける人がいないことが原因だ。商社については、まったくの白紙にゼロベースで商社の次世代の姿をデザインできる高度な戦略思考が必要だ。

  個別最適=内部オペレーションの効率化をめざすだけであれば、数百万円のRPA (ロボティクス ロボット技術をつかって反復処理を自動化する技術)で十分だ。PLMというのは、そのように矮小化された領域を最適化するものではないのである。 

中国では既に稼働しているCPFR型ベースのデジタルSPA

  私は、米国ニューヨークのPLMベンダー、アジアの統括CEO達と、定期的にSkypeなどを使って世界のPLMの先端技術について議論をしている。日本でやっても伝言ゲームになるだけで、正確な情報が入らないからだ。そして、私の提唱するCPFAベースのデジタルSPA、クラウド技術を使ったマルチベンダー、マルチアパレルエコシステムはすでに中国で同様のコンセプトを使って稼働しているという事実を知った。

  私が「デジタルSPA」を海外講演したのは、今から3年前のこととなる。当時、中国も韓国も立ち見客が現れるほど、大学や講演会場に人があつまり私の話に聞き入っていたことを思い出す。このままいけば苦境に陥るのがわかっているくせに動こうとしない日本企業とは大違いだ。

  インバウンド需要がなくなった今、国内では日本人だけの本当の需要が見えてきた。コロナショックにより、多くのアパレルは壊滅的な打撃を受けている。ただ、誤解して欲しくないのは、アパレル業界の本当の敵は暖冬でもなければ、コロナでもないということだ。本当の敵は、今や世界2位のアパレル企業となった、ファーストリテイリングであり、ユニクロである。既知の事実だが、もはやユニクロのキラーアイテムであるヒートテックは日本の認知率の90%を超え、ユニクロの購買者には多くの富裕層が含まれる。今時、「ユニクロは我々とは客が違う安物屋だ」などと言っているねは、全くマーケティング視点が欠落していると言わざるを得ない。

 

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