本当の敵はユニクロ!?苛烈なアフターコロナのアパレル業界の世界

河合 拓
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コロナに関する論や方向性もそろそろ固まってきたようだ。各国でワクチンの開発が粛々と進められており、人類がいずれこの脅威のウイルスに打ち勝つことは明白、その期間は長くても1年程度と想定される。
このコロナショックをあえて前向きに捉えるならば、「数十年動かなかったアパレル業界を変革するトリガーになる」と考えられる。その理由を示すとともに、アフターコロナのアパレルビジネスの世界にお連れしよう。

RyanJLane / iStock
RyanJLane / iStock

アフターコロナが全く別の世界になる理由

「前向きに捉えれば、このコロナショックは、数十年、鉄の山のように動かなかったアパレル業界を変革するトリガーとなるだろう」。

 このようにある経営者は言ったが、私も同意見だ。私は様々な人たちと討議を繰り返しているが、彼らと合致している論点は、「アフターコロナは全く違う世界になる」ということである。ロックダウン、オーバーシュートなど、近視眼的な話が飛び交うが、賢明な企業や個人はすでに「アフターコロナ」の準備を着々としている。PBR(株価純資産倍率)が1を割った日本企業に株式投資を行っている個人もそうだし、事業モデルを変える時期と、テレワークを使って戦略立案プロジェクトを進めている企業もそうだ。

  西の名門アパレルといわれたワールドは、45歳のコンサル出身の鈴木信輝氏が新社長に就任することを発表。同時に物販からの脱却を宣言するかのごとく、次々と企業買収を行い、独自のプラットフォーム事業を主軸に置くことを発表した。

 またファッションビルの丸井もD2Cと呼ばれるイノベーション企業に投資や育成を行う子会社を設立した。もはや、「安く買って、高く売る。売上は出店で増やす」という昔の教科書は通用しないのだ。

 アフターコロナに向けた準備は、一部企業で着々と行われているのだ。ある企業の経営者の言葉を借りれば、「巣ごもりしている場合ではない」のである。

  こうした中、弱体化したアパレル企業とは裏腹に日本は投資先が見つからず空前の金余り現象となり、ファンドを中心とした金融機関は大忙しである。すでにいくつかのメディアに発表されているように、業績不振企業ではカーブアウト(大企業が不要な子会社を切り離すこと)や事業承継(主に中小企業の後継者問題)型M&A(合併・買収)が増加している。これらの状況はコロナショックが潜在化させたわけだが、その原因は本質的にはコロナと関係ない事業環境の変化に遅れた企業の末路であるというのが私の見立てだ。

  コロナショックをトリガーに、テクニカルノックダウンを食らった企業に対して、アクティビストと呼ばれるファンドや商社がM&Aを仕掛ける。何十年も動かなかった「鉄の山」が動き、再編が加速されてゆくのである。

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