ドラッグストアに生鮮食品導入は成功するか カギをにぎる日本型フード&ドラッグの可能性

有田英明
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DGSに生鮮食品を導入することで発生する問題

 「生鮮食品の導入によって業績が上がった!」と言っている上場DGS企業もあるようだ。しかしDGSへの生鮮食品の導入は、良いことばかりではない。現実、以下のような問題が発生している。

 第1は、DGSの生鮮食品はセンター加工であり、地域一番のSMが行っているインストア加工に比べると鮮度や品揃えが劣ることだ。旬の食材やお客の食生活を豊かにする食材の提案は難しい。

 第2は、生鮮食品が入ると一般食品のアイテム数が増加し、コストが上昇する。例えば精肉を導入したら、黒コショウの品揃えは拡大しなければならない。つまりアイテム数の増加は作業量とコストの増加をもたらす。

 第3は、生鮮食品を扱うことでイニシャルコストもオペレーションコストも必ず上がることだ。コストアップしてもDGS同士の価格競争は継続している。コストダウンによってカバーする必要性が出てくる。小売業の損益計算書のコスト項目で大きいのは人件費なので、生鮮食品の導入によってコストアップしたDGSは「人件費の引き下げ」に取り組むケースが多い。

 具体的には店スタッフの数を減らす、パート比率を上げる、売場から薬剤師や美容部員といった専門職を減らす、社員の給料を減らすといった方法である。しかしこれらのことを行うと店スタッフのモチベーションが決定的に低下する。

 第4は、生鮮を導入するとイニシャルコストもオペレーションコストも上がるので、総資本営業利益率(ROA)が悪化しやすいことだ。特に上場DGS企業は、投資家からほかのDGSチェーンと比較されるので、ROAの悪化には敏感になる。

 つまり生鮮食品導入によってコスト増加とROA低下をカバーするためには「在庫の回転」を上げることが必要になる。そこで在庫回転が悪くなりやすいカウンセリング化粧品をはじめ、ヘルスケアや雑貨でも高機能高単価な潜在需要アイテムの在庫を徹底的に削減、あるいはカットするようになる。しかしこれらのことを行うと売場からスペシャリティという魅力が失われる。

 DGSによる生鮮食品の導入は簡単なことではない。H&BCと雑貨ではDGSとの競争があり、生鮮食品ではSMと競争になるからだ。一歩間違えれば、DGSとしても魅力がなく、生鮮食品でも魅力がない中途半端な店になる。

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