橋田壽賀子脚本の名作『おしん』のモデルといわれる2人の女性スーパーマーケット創業者

千田直哉
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女性8人でスーパーマーケット経営に乗り出した女傑

 もうひとり。『おしん』にはモデルがいたといわれる。おしんは、佐賀県に嫁ぎ、ひどい嫁いびりを受ける。
 佐賀県佐賀市にスーパーマーケット/ハロー(現マックスバリュ九州)を興した牛島國枝さんがその人だ。
 生まれは明治44年。15人の友人を集め、読書グループ「菱の実会」で活動を続ける中で、偶然目にした「主婦の店」の記事に感化され、スーパーマーケットの経営に女性8人で取り組んだ。昭和33年に1号店を出店以降、着実に成長を重ね、北九州では屈指の小売企業に育て上げた。

スーパーマーケット/ハロー(現マックスバリュ九州)を興した牛島國枝さん
スーパーマーケット/ハロー(現マックスバリュ九州)を興した牛島國枝さん

 牛島さんは経営者と同時に政治家としての顔も持つ。佐賀県市議会議員や佐賀県県議会議員を歴任。昭和49年には藍綬褒章を昭和55年には勲4等瑞宝章をそれぞれ受けている。
 実は、牛島さんには2度お会いしたことがある。1度目は『チェーンストアエイジ』誌(現:『ダイヤモンド・チェーンストア』誌)に自叙伝の連載をお願いに行った時。もう一度は、『チェーンストアエイジ』誌の特集企画「むかし主婦の店があった」(1996年6月1日号)の取材時である。
 話を伺っていると、小柄な体型には似つかわしくない凛と通った筋を感じた。
 そのことを率直に申し上げると「実は5年前に骨折して針金が3本身体に入っている。だから筋金入りなんです」と笑ってみせるようなユーモアの持ち主だった。
 自叙伝用にカメラを向けると、その場の撮影を拒み、「実は、事前に撮影したものを用意しました」と女性のかわいらしさも備えている人だった。

 流通業界の黎明期には、橋田壽賀子さんの心と筆を動かすような女傑たちがたくさんいた。

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