実例に見る「危ない商業施設」の見分け方
2024年のショッピングセンター(SC)の新規開設数は38とコロナ前2019年の46には遠く、開業より閉業や縮小が多くなって総SC数も3037と2018年の3220をピークに6年連続して減少している。地域が衰退したり競争に負けて売上が減少し、空き区画が広がったり閉業に追い込まれるSCも増えている。
そんな”敗退施設”を、SCや市街地再開発からニュータウン、レジャー施設まで消費者目線で詳しく実況案内してくれるのがYouTubeチャンネル「だいまつのどこでも探検隊」だ。なかなか行くチャンスのない地方の施設もアクセスから館内状況までビデオ解説してくれるから、売上や販売効率の数字こそ出てこないが、小売の玄人にとっても少なからず参考になる。
本稿では、私がこれまでテナント側で出退店を検討した500を超える商業施設とデベロッパー側で関わった50近い商業施設の知見に業界報道などの近況情報も加え、敗退につながる危ない商業施設のパターンを探ってみた。
文=小島健輔(小島ファッションマーケッティング代表)

商業施設の近況とタイプ別の「成功率」
2024年のSC総売上高はインバウンドも加わって32兆1254億円と前年から4.2%増え、コロナ前19年(31兆9694億円)もわずかに上回ったが、この間の8.46%というインフレ率を差し引いた実質は19年の92.65%に留まる。小売総額に占めるSC売上シェアは19.22%と前年から0.31ポイント上向いたが、ピークだったコロナ前2018年の22.53%には遠く、この間に6.22%から9.78%にシェアを伸ばした物販系小売ECに流れたと推察される。
新設SCの平均店舗面積は1万7751㎡と前年から僅かに大きくなったが、平均テナント数は39.4と50〜60だったコロナ前からは一回り小ぶりになった。郊外の大型SC開発が停滞し、都心の再開発大型複合施設と郊外生活圏の足元型施設に二極化した結果と見られる。
借地借家法が改正されて定期借家契約が広がり、大店立地法が施行されてSC開発が加速した00年からリーマンショック(2008年9月)までの巨大SC開設ラッシュを思えば「SCエイジ」も終わった感が漂い、競争に敗れて空き区画が広がったり、行き詰まって廃墟化するSCも少なからず見受けられる昨今だ。
「SC」と「商業施設」を言い分ける場合もあるようだが、日本ショッピングセンター協会の定義(「核店舗を除くテナント小売業が10店以上かつ合計店舗面積が1000㎡以上で広告宣伝や催事の共同活動が行われている」)には駅ビルやファッションビル、地下街はもちろん、テナントを導入した大型量販店や一部のパワーセンターまで含まれるから同義と言って差し支えなく、本稿では「商業施設」で統一したい。その中を立地や性格で「駅ビル」「ファッションビル」「アーバンモール(地下街や複合施設)」、「郊外駅前型SC」「郊外車型SC」「アウトレットモール」と分けている。
繊研新聞社が集計した、売上を開示していないイオン系などを除く売上上位150施設中(館売上170億円以上)、「駅ビル」が39、「ファッションビル」が15、「アーバンモール」が16、「郊外駅前型SC」が30、「郊外車型SC」が34、「アウトレットモール」が15(他にエアポートモール1)。売上上位200施設に広げると「駅ビル」が57、「ファッションビル」が25、「アーバンモール(地下街や複合施設)」が21、「郊外駅前型SC」が37、「郊外車型SC」が39、「アウトレットモール」が20を数える。
繁華街立地が半分程度を占めるが、国内で168の大型SCを営業するイオンモールなどイオン系が含まれていない(三井系、三菱系、住友系は含む)ことを考慮する必要がある。ちなみにSC協会の24年の集計では「中心地域」が442施設、「周辺地域」が2595施設だから、アパレル業界に偏った集計であることは否めない。
200施設の販売効率(月坪当たり売上)を全て算出したが、「駅ビル」が突出して高く、
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