日本の農業を守りたい! 食品ロス削減に挑む「サステナブルジェラート」とは

2025/10/22 05:00
吉牟田 祐司

大きさが基準に満たなかったり、形が悪かったりといった理由で出荷できない規格外の果物や野菜をどうにか利用できないか。そんな課題意識からジェラート製造を手掛けているのがフォレストバンク(大阪府)だ。日本の農業を守るため、小規模農家の収益モデルを変えたい――。熱い志を抱いて食品ロス削減に挑戦し、事業展開を拡大する小林亮社長に話を聞いた。

「なぜ農家を廃業しなければならないのか」 学生時に抱いた強い違和感

フォレストバンク農場訪問の様子
農場訪問の様子

 ジェラート製造は目的ではなく手段だった。幼少期から長期休みになるたびに宮崎県都城市にある母親の実家へ。祖父母をはじめ親族の多くが農業を営み、おいしい果物や野菜を食べさせてくれた。しかし高校生の頃には農家を辞める人が増えていた。これだけ品質の高い農産物を生産しているにもかかわらず、なぜ廃業しなければならないのか。大きな違和感を抱くとともに、何とかしたいと思った。小林氏に起業への思いが芽生えたのは17歳のとき。大学入学後はアルバイトでお金を貯めて世界15カ国で食べ歩き、市場に並ぶ農産物を見て回った。

「たとえばアメリカ、キューバ、メキシコを回ったときは、荷物はバックパック1つ、ほぼ毎晩車中泊で約40日滞在した。費用は飛行機代込みで30万円ほどの貧乏旅行だったが、どのような農作物が作られ、売られているのか。自分の目で確かめられた。アフリカのある国では日本では規格外になるどころか腐敗してハエがたかっているような果物も並んでいたが、気にせず買っていく人もいた。やはり日本の農作物は世界的にも段違いに品質が高いと再認識した」(小林氏)

 大学卒業後はIT関連の上場企業に就職。農業に関わる事業を立ち上げたいという思いもまだ抱いていたが、具体的に何をするかは決まっていなかった。IT業界を志望した理由を「いずれ会社を興すなら、ITリテラシーが必要なことは明らかだったから」と小林氏は振り返る。

 会社員として働きながら、今度は日本全国の小規模農家を休日のたびに訪問した。「『話を聞かせて欲しい。規格外の農作物を買い取りたい』。そういったビジネスやお金絡みの話をすると断られることが多かった。それで宮崎県の知り合いがいる地域の農家に収穫体験をさせてもらって、またその知り合いを紹介してもらい、訪問先を広げていった」と小林氏は振り返る。その時に築いた人脈が今、財産になっているという。

フォレストバンク農家さんとの一枚
農家さんとの一枚

「規格外の農作物をジェラートにするアイデアは、ジャムを販売しようと作ったものの、売れずに200個もの在庫を抱え、まもなく賞味期限が切れてしまうと困っていた農家さんの話がきっかけで生まれた。アイスクリーム類であれば食品衛生法による賞味期限の表示義務が免除されていると知って、だったらジェラートでいこうと決めた。それまでの過程で知り合った農家のおじいちゃん、おばあちゃんには、まるで孫のようにかわいがってもらい、今も親しくお付き合いしている」(小林氏)

1 2 3
© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態