ヨレヨレ、雨シミ、臭い?それでもバーバリーなど英国3コートブランドが愛されるワケ
シミが付きやすくヨレ感や汚れが味になる
バーバリーのコート
まず、バーバリーだが、「ギャバジン」という特殊な編み方で、綿糸を高密度で織って撥水性を高めている。そもそも綿糸は水分を吸収しやすく、またシミになりやすいのだが、高級な素材を30番手にまで太くして(番手とは糸の太さ)、密度をギリギリまで高め撥水性をよくしている。
当然、元の素材は綿糸だからシミが付きやすいのだが、そのヨレ感や汚れが「味」になっていく。私も20年ぐらい使っているバーバリーのコートを一着もっているが、高価な「人間の知恵の結集」を買い、長く使うというのはなんともイギリスらしくて良い。なにしろ、ロンドンを歩くと日本のようにBMWだ、ポルシェだなど高級なクルマに出会うことはほとんどない。ボロボロの小型車を幾度も直し「クルマなど走ればいいんだ」とばかりに、ドライブを楽しむ。ロンドンっ子達の粋な部分である。
余談ながら、このバーバリーのコートは「トレンチ」といって、軍仕様のデザインが有名だ。また、競合は「Aquascutum」(アクアスキュータム)であるが、残念ながらアクアスキュータムは2012年、親会社であるレナウンの業績不振とともに日本では会社管理手続きを申請し、事実上破綻した。それに対し、バーバリーはブラックレーベルなど、ディフージョンラインを展開し三陽商会の“ドル箱”になった。この2つの違いはどこにあったのか。
実は、バーバリーやアクアスキュータムのようなイギリスの名門ブランドは非常にブランド管理が厳しく、ライセンス供給先の好きなようには動かせない。
しかし、三陽商会は「このバーバリーチェックはスカートに使えばきっと売れる」と、イギリスと幾度も提案し続けたそうだが、バーバリー側には何度も断られたそうだ。しかし強行突破してバーバリーチェックのスカートを出したところ、「女子高生の制服」の位置づけとなり、大ヒット。その他のデザインも日本仕様にファインチューンしたバーバリーブルーレーベルをだし、大成功した。それに対してアクアスキュータムは、イギリスの仕様にキッチリ従ったのだが、結局、イギリスの「古き良きファッション」が日本にそぐわず、日本で破綻したのである。このように、ブランドビジネスというのは、前回紹介したTHE NORTH FACE(ザ・ノースフェイス) のように、国ごとに微妙にカスタマイズしなければ売れない。あのGAPでさえレディースは日本のMD(商品政策)で行っているのだ。
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