イオン北海道の青栁英樹社長が語る「規模の経済と地域密着を両立する」組織の作り方

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経営規模の追求と地域密着を実現する!

──そうしたなかイオン北海道は20年3月、マックスバリュ北海道と経営統合する予定です。経営統合に先立って、すでに両社の食品部門を統合されたそうですが、どのようなシナジーが、期待できますか。

青栁 すでにマックスバリュ北海道とは、共同で商品の仕入れや開発を行っていますが、そうした取り組みがよりスムーズに進むようになるでしょう。当社は翌21年、プロセスセンターを開設する予定ですが、マックスバリュ北海道とともにこれを利用すれば、効率が高まります。また、マックスバリュ北海道は、食品売場の運営が得意です。当社がそのノウハウを導入すれば、人手不足のなか、オペレーションの効率化に役立つでしょう。半面、SM企業のマックスバリュ北海道にとっては、当社のヘルス&ウェルネスのノウハウが生かせるはずです。さらに、当社は、財務基盤が強固ですから、出店意欲旺盛なマックスバリュ北海道の投資需要を満たすこともできます。

イオン北海道食品売り場
生鮮食品ではマックスバリュ北海道との間で共同仕入れを行い、産地との関係強化、鮮度向上をねらう。写真の釧路産パプリカはグローバルGAP認証商品だ

──GMSとSMでは「同じ食品売場でもMDが異なるので、経営統合してもシナジーが少ない」といった見方もあります。

青栁 そこは、マックスバリュ北海道とすでに議論済みです。簡単に言えば、MDを2段構えにしたのです。食品部門の組織は、まず、食品の仕入れや開発などを担う商品部を、カテゴリー別に一本化しました。これをしなければ、スケールメリットが得られません。

 その一方で、商品部の各グループにMDを担う統括マネジャーを配置し、エリアのMDを踏まえたうえでGMS、SMをそれぞれサポートする体制にしました。各店に最適の品揃えを実現することがねらいです。それに合わせて、棚割りも、全店統一のプロトタイプをベースとして、各店舗の商圏状況などに応じて調整する仕組みにしました。たとえば、GMSとSMは、プライシングが違うと言われますが、必ずしもそうではありません。札幌・円山エリアにあるSMでは、高級食材もよく売れます。結局MDは、個店対応が極めて重要なのです。カテゴリーとエリアのマネジメントを組み合わせることで、相反する「経営規模の追求と地域ニーズへの密着」を、両立したいと考えています。

住関連も衣料品も好調な理由とは!?

イオン北海道衣料品売り場
衣料品、住関連品が好調なのは、地域に合ったMD、商品開発が進んでいるため。イオン北海道限定でコールマンとタッグを組んだ商品などが並ぶ

──興味深い取り組みですね。ところで、イオン北海道も、すでにEC事業を進めていますが、手ごたえはいかがでしょうか。

青栁 売上高は、18年度に比べれば、2倍以上に伸びています。今後も、EC事業の拡大を図ります。とりわけ、力を入れたいのが地場の生鮮食品です。北海道ブランドの生鮮食品は、全国的にも人気があり、ECなら道外にも拡販しやすいからです。生鮮食品は、「自分の目で確かめたい」という要望が強いのですが、「イオンの店頭と同じ食品なら、ECでも安心」という長所もあります。その一方、ECでは、商品をネットで注文して最寄りの店頭で受け取る「クリック&コレクト」の機能も重要です。マックスバリュ北海道の店頭でもクリック&コレクトがスタートできれば、それも経営統合の利点の一つになるでしょう。

──全国的にGMSの非食品部門は大苦戦中ですが、イオン北海道は例外です。19年2月期上期実績で、衣料品、住居関連部門とも既存店ベースでプラスとなりました。その秘訣は何でしょう。

青栁 ここ3年ほどで、地域ニーズをきめ細かくフォローできるようになったからだと見ています。北海道では、衣料品や住関連のニーズは天候、とりわけ、降雪に大きく左右されます。たとえば、衣料品は、本州と違って、春夏物は7月までに売り切り、秋冬物を8月までに揃えなければなりません。天候にフィットした商材を機動的に投入できるかどうかが、勝負の分かれ目になるわけです。そこで、メーカーさんとタッグを組んで、イオン北海道専用商品の開発をアパレル等で進めており、その成果が着実に出ている格好です。

──では、経営統合後の投資計画を教えてください。

青栁 物流センターの建設費なども含めて、年間では100億円規模を予定しています。店舗への投資は、GMSの大型改装が中心になるでしょう。GMSは、グループのアンカーとして5年先、10年先も、地域一番店であり続けねばなりません。人口減少下では、大型店は一番店しか勝ち残れないからです。その一方、SMは年間数店舗のペースで新規出店する見込みです。

──経営統合後の業績は、どのようになると予想していますか。

青栁 当社とマックスバリュ北海道を合わせた売上高は直近では3200億円以上、食品売上高は1800億円以上となる見込みです。イオングループでは統合後の地域子会社の売上として5000億円を目標としていますが、25年に向けて近づけ、また規模だけでなく、キャッシュフローや営業利益といった質も重視します。財務のバランスが取れ、再投資と持続的成長が可能な企業をめざしていきます。

イオン北海道会社概要

設立 1978年
本社所在地 札幌市白石区
代表者 青栁英樹
売上高 1857億円(19年2月期)
営業利益 営業利益82億円(同)
店舗数 78店舗(うちまいばすけっと37、イオンバイク1)
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記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

ダイヤモンド・チェーンストア編集部は、業界をリードする提案型編集方針を掲げ、小売業の未来を読者と共に創造します。私たちは単なるニュース伝達に留まらず、革新的なビジネスモデルやトレンドを積極的に取り上げ、業界全体に先駆けて解説することを使命としています。毎号、経営のトップランナーへの深掘りインタビューを通じて、その思考や戦略を読者に紹介します。新しくオープンする店舗やリニューアルされた店舗の最新情報を、速報性と詳細な分析で提供し、読者が他では得られない洞察を手に入れられるよう努めています。私たちの鋭い市場分析と、現場の細部にわたる観察を通じて、注目すべき店舗運営の秘訣を明らかにします。

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