スポーツアパレル市場が今後も成長する理由とユニクロの役割とは
パリ2024オリンピックがはじまり、連日ワクワクする日が続いている。オリンピック市場も活況だが、実は国内スポーツアパレル市場も活況が続いている。今、アパレル企業にとって、①インバウンド向け高額ブランド品、②日本人向けスポーツウェアやギアが“ドル箱”となっている。スポーツ市場はこれからも伸びるのか、各社はスポーツアパレルに確信をもって資金を投ずることができるのか?3つの視点から論じてみたい。

スポーツアパレル市場がこれからも成長する理由
まず、国内スポーツ市場の状況について確認しておきたい。国内スポーツアパレル市場は拡大を続けており、矢野経済研究所の調査によれば、2023年度の同市場規模は4.3%増となる6131億円を見込んでいる。これには当然各種スポーツ用のウェアも含まれているが、本稿では主にアウトドアウェアやトレーニングウェア、そしてアスレジャーなど適度に洗練されたスポーツウェアについて主に対象にしている。
答えを先にいえば、スポーツアパレル市場はこれからも成長を続けていく。3つの視点から検証してみよう。
理由1 日本人が貧しくなり、“安価に楽しめる”スポーツやアウトドア関連が売れる
長らく続いたデフレ基調が終わり、ここ数年国内の物価は上がり続けている。給料は大手企業では上がっているという報道がなされるが、日本の企業の99%超を占めるのが中小企業で、そこで働く従業員の給料は下がっている人も少なくない。結果、23年度の労働者1人あたりの「実質賃金」は対前年度比で2.2%の減少となった。これは、インフレに比べて十分な賃金上昇が得られていないということである。
テレビやメディアでは日本の景気が浮遊しない要因として、“日本人の貯蓄志向”を挙げ、「いざという時のために金を貯めていることが悪い」などと言っていた評論家がいたが、今が多くの消費者のとってのその「いざ」というときだ。
足りない収入を「いざという時のために貯めたお金」を切り崩して生きながらえているのが現状なのだ。こうした人達が、コストをほとんどかけずに楽しめるのがアウトドアやスポーツである。この時期、区民プールは多くの人でにぎわうし、真夏を除けばゲートボールを楽しむ高齢者は非常に多い。若い世代も、休日にはゴルフやテニス、野球などに精を出している。ゴルフも中古のクラブを買い揃えて、格安コースを回ればそれほど金はかからない。テニスはラケット1本でプレイは可能だ。
何よりも健康を維持できれば、医療費も節約できる。国民皆保険で高額療養費制度があるからもともと、米国などと比べて医療費はかからないのが日本だが、適度な運動がいっそうの節約につながるというわけだ(けがのリスクは高まるかもしれないが)。
旅行や外食、百貨店でのお買い物、演劇鑑賞などが、数十年前までは家族の憩いの場だったが、今では「家計が苦しくて遠慮している」というのが多くの人の本音である。政治の経済政策の失策が消費を減らし「いざ」というときのために国民は支出を絞る。支出はスポーツやアウトドア製品に向かうわけだ。

「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
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