増収増益が続く「物語コーポレーション」、席数を減らす“減卓投資”がなぜ効果的なのか?

2020/01/20 06:00
ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局

14期連続増収増益、19年は2ケタ増

 同社の設立は1969年(当時は株式会社げんじ。97年6月に現社名に変更)。2008年にジャスダック証券取引所(当時)に上場すると、10年6月に東証第二部、翌11年6月には市場一部に指定された。
 焼肉店(「焼肉きんぐ」など)、ラーメン店(「丸源ラーメン」ほか)、寿司&しゃぶしゃぶ店(「ゆず庵」)、お好み焼き店(「お好み焼本舗」)などの飲食店舗を、全国ならびに海外子会社を通じて中国市場で展開しており(2019年11月末で、直営290店舗、FC223店舗)、19年6月期の業績は、売上高が前期比13.0%増の589億円、営業利益同17.1%増の39億円、経常利益同21.2%増の46億円で、14期連続で増収増益を続けている。既存店実績についても、19年6月期は売上高前期比101.5%、客数同101.3%、直営の売上高は102.0%、FCが100.8%であり、既存店売上高は9期連続の前年実績超えだ。
 外食業界内で19年の決算状況を見ていくと、2ケタの増収増益は、売上高400億円以上の企業ではスシローグローバルHD、ペッパーフードサービスと同社の3社。14期連続増収増益は高収益企業として知られるハイデイ日高(16期連続)に次ぐものだ。収益性を表すROA(総資産収益率)は、ペッパーフードサービス(18.6%)、ハイデイ日高(15.6%)に次ぐ15.0%となっている。
 あらためて、言うまでもないが、同社は好業績、高収益企業である。しかし『物語コーポレーションものがたり』内でも記されているように「予算達成のプレッシャーでコントロールしようとする志向性」はもっておらず、悪くても「前期の水準は越えよう」といういわば社内の約束事があるだけで、それにもかかわらず、毎年、きっちりと数字を確保している。

「個」を尊重し、若いうちから経営に参画できる仕組み

 数字、数字で追い込まなくても、最終的に予算ベースをクリアできる。その秘訣はどこにあるのだろう。
 同社には、社員の行動を規定するユニークな経営理念や決まり事、約束事がいくつもある。
 経営理念は「Smile & Sexy」。「スマイル」は「笑い」、「セクシー」は「カッコよさ」ということであり、「自らを磨き自立した人間は、自ら意思決定できる」という考え方に基づく。2017年の新年の朝礼では「おせっかい元年」を宣言。物語コーポレーションを「日本一おせっかい好きな飲食大家族」と定義すると明言した。ここでいう「おせっかい」とは「あたたかいコミットメントであり、おもてなしやホスピタリティを超えたもの。相手のことを思いやって、あたたかい心で積極的に関わっていく行動様式」と位置付けている。飲食店は「お客を喜ばせる」という部分が抜け落ちると、どんなに立派な理論があってもうまくいかない、という考え方に通じるものがある。
 同社では「『個』の尊厳を『組織』の尊厳の上に置くという考えのもと、一人ひとりを尊重する風土が根付いており、人種・国籍・年齢・性別関係なく、それぞれが闊達に意見を述べ、議論する文化がある。若いうちからさまざまな立場で経営に参画できることも、やりがいにつながっている」という。
 同社の標準的な店舗は、3〜5名程度の社員を配置している。一般的なロードサイド型飲食店より規模が大きいということもあるが、社員(または同等の役割の人も含む)が3名以上いてはじめて、店長、副店長、新人、あるいは店長、副店長、新人2〜3名といった、階層構造が生まれ、現場におけるきめ細かなOJTが可能になるからだ。正社員が孤立しないという配慮も含まれているという。
 物語コーポレーションでは、新卒者の場合、「1年経過後に主任、1年半で副店長、2年で店長」が標準モデルで、遅くとも3年で店長になってほしいと考えているそうだ。
 同社を辞めざるをえなかった人に聞いたことだが、「プロフェッショナルを育てることに精通している」と同社の人材育成の仕組みに感心していたことを思い出す。

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