【再掲】イオンモール吉田 昭夫社長 小売発想の編集力に磨きをかけ「ライフデザインデベロッパー」になる!

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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※この記事は2015.4のダイヤモンド・リテイルメディアによるイオンモール社長インタビューを再掲したものです。

SC出店計画 海外が国内を上回る

──海外での事業展開については、どのように考えていますか。

吉田 14年度は中国、ベトナム、カンボジアへ計4カ所のSCを出店し、単年度では最大出店数となりました。その結果、海外のSCは中国とアセアン諸国で9カ所となりました。15年度はさらに海外出店を加速させます。国内5SCに対して、中国・ベトナム・インドネシアに計10SCを出店する計画ですから、海外出店数が国内を上回ることになります。イオングループの中期経営戦略の4つの柱の1つであるアジアシフトを象徴する年になるでしょう。

 国内市場がシュリンクするなか、経済成長を続ける中国やアセアンでの出店は、われわれにとって大きな成長ドライバーになることは間違いありません。海外出店は、差別化された新規SC出店、既存SCの活性化と並ぶ、われわれの成長戦略の第三の柱になります。

 ただ、中国やアセアン各国では競争が厳しいのも事実です。たとえば中国では、年間に何百もの大型SCが出店する状況下で戦っていかなければなりません。厳しい競争のなかで、われわれが勝ち残るために必要だと考えているのは、ハードとソフトの両面からの差別化です。

 たとえば、駐車台数があります。海外のデベロッパーは単位面積当たりの収益性を重視するため、直接的に収益を生まない駐車場のスペースをとりたがらない傾向があります。しかしわれわれは、モータリゼーションが急速に進んでいるため、駐車場台数をしっかりと確保することにこだわっています。通常、駐車台数は2000台以上としています。その結果、クルマを持つ富裕者層の集客に成功しています。

 このほか、日系企業のテナントを誘致することで特色を出していますし、外食機会の多い食習慣に合わせて、飲食店のテナント構成比率を高めたりしています。インドネシアでは飲食店の構成比は50%に達するほどです。

イオンモール

 

──海外での運営方法で競争相手との違いはありますか。

吉田 われわれの成功例は競争相手にすぐに取り込まれてしまいます。競争相手に簡単に真似のできない差別化ポイントは、SC開店後のオペレーションです。テナントと定期的なミーティングを行い、相互の協力体制を築きながら、トイレの清掃や従業員の接客といった基本のオペレーションの品質維持を徹底しています。また、年間をとおして季節行事に合わせた各種のイベントを実施していることも、ほかのSCとの差別化ポイントの1つです。海外のデベロッパーが決して手がけない、日本でのSC運営で培ったノウハウを生かすことができるのは、われわれの大きな強みです。

 イオンモールが初めて海外に進出したのは08年、中国の「イオンモール北京国際商城」が1号店ですが、手探りだった当時から比べるとSCの仕上がりは非常によくなっています。実際、昨年出店した中国江蘇省蘇州市1号店となる「イオンモール蘇州呉中」は大きな成果を上げました。このSCは、11万4000平方メートルの敷地面積に7万5000平方メートルの賃貸エリア、約3000台の駐車場を備え、約200店舗のテナントを誘致した本格的なリージョナルSCです。

 イオンモールの知名度が低い海外では、地域1号店を成功させることは非常に重要です。初めて進出するときはイオンモールの会社説明から始めなければいけませんが、お客さまを集められるデベロッパーだという評価が定着すれば、次に出店するときからは有力テナントが自然と集まってきます。地域でブランドを確立できれば、複数出店も可能となるのです。今年、蘇州市に2号店を出店できるのも1号店の蘇州呉中が好調だからです。

 海外展開にあたっては、地域の自治体や政府としっかりコミュニケーションをとっていくことも大事です。イオングループ全体でも、万里の長城の植樹活動を北京市と協働して実施したり、グループ優良企業が税引前利益の1%を拠出して活動する「イオン1%クラブ」で子供同士の国際交流に力を入れたりするなど、さまざまな取り組みをしています。このような地道な草の根の活動は、海外でスムーズに受け入れてもらうためにも非常に大切です。

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