ユニー取り込んだ新・GMSの盟主 ドン・キホーテの「死角」に迫る

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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驚異的な成長を見せる「ダブルネーム店舗」 

 18年度の業績がここ数年のなかでも際立って飛躍した背景には、191月に総合スーパー(GMS)大手のユニー(愛知県/関口憲司社長)を傘下に収めたことが大きい。ユニーをめぐっては、178月にドンキホーテホールディングス(HD)がユニー・ファミリーマートHD(現ファミリーマート)と業務提携し同年11月にユニー株40%を取得。191月には残る60%の株式も約280億円で取得して完全子会社化したという経緯がある。ユニーの売上を単純合算して小売業界4位の規模に上り詰めたドンキホーテHDは、その後2月にPPIHに社名を変更している。

そして、PPIHの新たな成長エンジンの1つとして注目されているのが、そのユニーと共同出店しているダブルネーム店舗である。これはユニーが展開するGMS「アピタ」「ピアゴ」の既存店を、「MEGAドン・キホーテUNY」または「ドン・キホーテUNY」に業態転換するかたちで出店している新たなフォーマット。PPIHはユニーの既存店約180店舗のうち100店舗をダブルネーム店舗に転換する方針で、18年2月に1号店「MEGAドン・キホーテUNY横浜大口店」を神奈川県横浜市にオープンして以降、今年11月末までに25店舗の転換を完了している。

ダブルネーム店舗の基本的なコンセプトは、食品の売上ボリュームが高かったユニーの店舗に、ドン・キホーテが得意とする化粧品や日用雑貨、家電などの非食品カテゴリーを付加するというもの。ユニーの強みである生鮮を含む食品で価格を訴求して集客を図りつつ、粗利益率の高い非食品の同時購買を促すことで店舗の収益性を高めるねらいがある。

その“転換効果”は今のところ絶大だ。PPIHの決算資料によれば、19年度に転換した10店舗では、転換前と比べて売上高が2.2倍、客数が1.6倍、粗利益高は2.2倍にそれぞれ増加している。

このダブルネーム店舗成功の要因は大きく「顧客層の拡大」と「売れる商品の変化」に分けられる。旧来のユニーの店舗は50代以上の客層がメーンだったが、ドン・キホーテならではの充実した品揃えや圧縮陳列、POPの多用などによる「時間消費型」の店づくりにより、若年層やファミリー層を獲得。また、ユニーが従来あまりカバーしていなかった、単価の高い家電や雑貨、コスメ用品の販売に力を入れることで売上・利益をアップさせたというわけである。

ユニーの“戦力化”を急ぐPPIH

 競合GMSの苦戦を尻目に成長を続けるPPIHだが、解決すべき課題もある。

 1つめは、ユニーとの組織面での“融和”だ。完全成果主義の人事システム、徹底した個店経営システムなど、PPIHの「常識」を、ユニー社員が一朝一夕で理解することは難しい。そのためか、PPIH傘下となって以降、ユニーでは管理職を含め退職者も増えているという。

 しかしPPIH側は、ユニーの組織風土を変えようと必死だ。今年4月には、かつて長崎屋を「MEGAドン・キホーテ」に転換して軌道に乗せた関口憲司氏がユニーの社長に就任。本部主導型の経営システムから個店経営体制に移行させるなど、早くもドンキ流の経営手法を移植している。また、ダブルネーム店舗では原則として「総店長」にドン・キホーテ出身者、「店長」にユニー出身者を配置し、総店長から店長にドンキ流の個店経営の手法を継承。将来的には、ユニー社員だけでダブルネーム店舗を運営できるようにしたい考えだ。

 PPIHとしても、ダブルネーム店舗ばかりにリソースをかけているわけにはいかない。グループ全体で継続的な成長を続けるためには、いち早くユニーの組織変革を完遂し彼らを戦力化する必要に迫られているのだ。

※本稿後編は明日、12月26日に公開します。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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