ブランドは<作る>ものではない!流行りのマーケティングからブランドが生まれない必然の理由!

2019/12/10 06:11
河合 拓

前回、私は「アパレル業界」のポスト・デジタイゼーションは、「ブランド戦略 = 差別化戦略」だと説明した。ただその肝心のブランドについての誤解や無理解が目立つ。ブランドとは、単に名前をつけてメディアで騒げば価格がつり上がるといったものではない。そもそも本来的に「ブランド」には、価格に見合った価値が存在する。かつて私がブランドを<作ろう>として失敗した事例から、ブランドを<作る>という考えがどれだけおかしなことかを解説したい。ブランドを正しく理解することの一助にしてほしい。

Photo by Harbucks
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 企業のDNAや哲学が、付加価値を生み出す

 立ち居振る舞いが美しい人がいる。例えば、日常生活でいえば、ささいなことだが、魚を小骨を取り除いて綺麗に食べられる人、背筋がしっかり伸びていて凜としている人、どれだけ屈辱的なことをいわれても笑顔を絶やさず相手を受け入れる人、等々。こうした人達は、幼少期から厳しくしつけられ、カラダの隅々まで「美しい所作」というものができている。

 企業、そして、その企業が生み出す製品も全く一緒で、組織のDNA、自社の美学、哲学をしっかり浸透させている業務プロセスから生まれる製品やサービスには、「一点の曇りも無い」し、そうした一連のアウトプットを連ねる「一貫性」というものがある。確固たる価値観が組織に浸透し、その価値観が業務プロセスを制御するようになれば、組織の自助作用で製品やサービスは高い付加価値を生み出してゆくのだ。

  私は、その昔、破竹の勢いで成長するアパレルブランドを調べ上げ、完全なコピーをつくって安価な値付けをし、大失敗したことがある。コピーは完璧だった。しかし、大規模な消費者調査を行った結果、リアルな消費者達はハッキリと「本物」と「偽物」のディテールの差を意識し、高くても「本物」が欲しいという声が圧倒的だったのである。正直にいえば、女性向けのそのブランドの「本物」と「偽物」の違いは、男性である私には理解できていなかったのだ。

 私はこうした一連の経験から、「新ブランドを立ち上げる」というフレーズそのものに疑念を抱くようになってきた。今まで、自分なりのやり方をしてきた人が、流行っているからといって、いきなり流行の商品のコピーをしても、所詮は付け焼き刃。そこには、その企業ならではの価値観もなければ一貫性もない。これは、ろくに勉強をしなかった人が徹夜でテストを乗り切ったとしても、試験が終わった後はすべて忘れるのと同じだ。普段の業務プロセス、普段の活動の隅々にまで組織が持つ価値観が浸透してはじめて、アウトプットされる製品やサービスに「違い」が生まれ、その「違い」を世に浸透させることでブランドになるのである。

  決して、ブランドは<作る>ものではない。むしろ顕在化させるといった方が正しい。だから、欧州のブランドコングロマリットは、自社にブランドを生み出す力がないと判断したらM&Aで、自社にない事業を買収するのだ。「ブランドをつくっておけ」などという指示をすることはない。

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