会員数約1.5倍!オイシックス・ラ・大地の今後の事業戦略とは?

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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商品原価や物流・配送費の低減で収益力向上を図る

 子会社らとの協業で新たな商品を提供するオイシックス・ラ・大地は、今後どのような事業戦略を描いているのか。

 新たな成長事業としては、15年に開始した保育園に給食で使用する食材と献立を提供する「保育園卸事業」を強化する。同事業は203月期 第2四半期で仕入れや物流体制の大幅な見直しにより黒字転換したことを機に、取引先保育園の新規開拓に注力。現在367の保育園との取引があるが、数年以内に2000園に拡大する考えだ。

 収益力強化の面では、商品原価や物流・配送費の低減に取り組む。具体的には、193月から運送大手ヤマト運輸と共同で農産品物流の課題解決を目的とする「ベジネコプロジェクト」を始動。従来は各生産者がそれぞれ出荷を手配し、オイシックス・ラ・大地の物流センターに配送していたが、この物流費用が商品原価に含まれているほか、生産者が個別に出荷便を手配しているため、手間とコストがかかるという課題があった。

 ベジネコプロジェクトではヤマト運輸が一括で生産者から集荷を行い、オイシックス・ラ・大地の物流センターにまとめて配送することで産地からの物流を効率化する。共同集荷実験で調達輸送費の大幅な削減が見込まれることが判明したため、第4四半期中の本格稼働を予定している。

 また、決算発表会では、主力ブランドOisixの急激な成長を受け、神奈川県海老名市に新たな物流ステーションを建設することも明らかになった。稼働開始時期は未定だが、製造キャパシティの増強と庫内作業の自動化を進めることで、物流センター費の低減を図る。

 そのほか、Oisix、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会の主要3ブランドのSPA(製造小売)化などにより商品原価の削減を図ることに加え、客単価を向上させることによって1配送当たりの収益性を高める。

 少子高齢化や有職女性の増加などにより、ミールキットは総菜などと共に簡便商品として今後ますます需要が拡大していくと見込まれる。矢野経済研究所によると、21年にはミールキットを含む国内食品通販市場規模は4兆円を超えると予想されている。このような背景のなか、オイシックス・ラ・大地はM&Aにより他社との協業で独自商品を生み出すだけでなく、収益力の向上で安定した企業体制を構築することで、日本のミールキット市場での地位を盤石にしようとしている。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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