百貨店、存在の証明エピローグ  アパレルの大量店舗閉鎖に苦悩 アウトレット化も

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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店内にアウトレットを導入! 地方百貨店の挑戦

 では、店舗閉鎖にしか百貨店の生き残り策はないのだろうか。前出の百貨店OBは「たとえば百貨店の大部分を都市型のアウトレットに衣替えしたらどうだろうか」と話す。

 その一つの例が青森地盤の百貨店企業、中三が運営する「中三弘前店」だ。同店は今年8月、店内にアウトレットフロア「MACHINAKA RACK(マチナカラック)」を開設した。店舗4、5階の52区画で展開する同フロアは、メンズ、レディースカジュアル衣料の「セオリー」やレディースファッションの「ジル・スチュアート」、アウトドアスポーツ用品の「ロシニョール」、キッズファッションの「べべ」など80のブランドを揃える。

 モール数も増加し、一時期ほどの盛り上がりはないといわれるアウトレットモールだが、人気モールはいつでも混雑しており、ブランドの神通力は健在だ。最近では、イオン(千葉県)も広島市郊外に「THE OUTLETS HIROSHIMA」を開業している。

 アウトレットモールの多くは大都市圏の郊外や観光地にあり、お客は遠隔地まで出向かなくてはならない。一方で、「中三弘前店」は百貨店の中にアウトレットを設けるという思い切った発想で、青森県のほか隣接する県含めた広域から集客をねらうという。

「とにかくなんでもやってみること」

 他方、「デジタル化への取り組みは、大手から中小までどこも遅れている」(百貨店OB)という。

 米国では、店舗とネットを組み合わせたシームレスな購買体験を実現している百貨店が現れ始めている。スマートフォンアプリを活用して、店に出向かずとも商品の情報を取得したり、購買できたりなど、店舗にショールーム的な役割を持たせている。こうした施策により、百貨店は店頭に不要な在庫を持つ必要がなくなるので、経営効率も好転しているというのだ。

 日本でも三越伊勢丹ホールディングス(東京都)がデジタル化を推進する方針を打ち出している。「とにかく何でもやってみることが必要ではないか。暖簾に胡坐をかき、アパレルメーカーに依存していたら将来はない」(同)。

 アパレルメーカーと二人三脚の「消化仕入れ」を前提とした“ぬるま湯”の中で改革の機会を失ってきた百貨店。気が付いたらぬるま湯がすっかり冷めきっていたということにならぬよう、変革に一歩踏み出すことが今の百貨店には求められている。(終わり)

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