百貨店、存在証明その5 J.フロントが挑む「百貨店モデルの再構築」

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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旧来の百貨店モデルを壊せるか

 「旧来の百貨店モデルを壊す」――。Jフロント前会長の奥田務氏の言葉だ。アパレルメーカーと二人三脚の「消化仕入れ」を前提とした“ぬるま湯”状態からの脱却が、同社の至上命題となっている。

 そのJフロントが今年9月にリニューアルオープンした「大丸心斎橋店本館」(大阪府大阪市)である。リニューアル後の同店は、従来型の百貨店の売場は全体の35%しかなく、残る65%はテナント売場となっている。旧来型の百貨店を、都市型SCに近いモデルの次世代型百貨店に再構築した格好だ。

 ただ、SCのデベロッパーは、導入したテナントが潤ってこそ儲かるビジネスモデルである。館全体の売上が好調でなければ、人気テナントは入らず、誘致できたとしても退店していくばかりだ。Jフロントとしては、テナントリーシング力を高め、館全体の売上を引き上げ、運営を効果化していかなければならない。これができないようであれば、収益性はいつまでも上向かず、勢いよく舵を切ったSC化路線の雲行きも怪しくなる。

 かつてイオンと“取得合戦”を演じた末にグループに加えたパルコ(東京都)の先行きも不透明だ。競合百貨店の関係者は「(百貨店のSC化戦略は)パルコとの相乗効果が出ないのではないか」と話す。「パルコが持つ商業施設の運営ノウハウを活用すべきではないか」という声もある。

 Jフロントが選択した「従来型の百貨店モデルを壊す」という戦略は、伴うリスクも少なくない。Jフロントは新しい百貨店モデルを創造し、百貨店業態の存在意義を示すことができるか。ギンザシックスに大丸心斎橋店本館、SC化戦略のもとオープンした巨艦店の成否が問われる。(次回に続く)

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