「ZOZO買収」後の世界を読む ヤフーも楽天もリアル店舗買収に進むこれだけの理由

河合 拓
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ZOZO買収後の世界はこうなる! 
2020年はネット企業によるリアル小売TOB元年~

ヤフー、楽天によるリアル店舗買収合戦はこれからはじまる
ヤフー、楽天によるリアル店舗買収合戦はこれからはじまる

 2018年夏。総合商社伊藤忠商事はデサントにTOBを仕掛け、同社の石本雅敏社長を更迭、韓国事業一本足打法から中国事業強化へと戦略の舵取りを変えた。

 日本では、古くは村上ファンドと東京スタイル、スティール・パートナーズとブルドックソース、堀江貴文氏のライブドアというように、ことTOBというと「ハゲタカ」、「金の亡者」など、ネガティブなイメージが強かった。だが、なぜか、伊藤忠商事とデサントの話は、ほとんどの国民が忘れてしまっているようだ。逆に言えば、国民の多くは政府のお経のような施策で、猫も杓子も「貯金から運用へ」という流れにより、金融リテラシーが高まってきたともいえる。また現実問題として、流通業界は一部の勝ち組企業をのぞいて、再編待ったなしといえるほどの打撃を受けている。

  こうした考察を進めていけば、激しく動いている流通業界の行く末と、3強の戦略は、ハッキリとその輪郭を見ることができる。

 予測!楽天とヤフーはリアル店舗を次々と買収する
では、Amazonは?

 まず、リアル店舗を持たない総合通販の楽天とヤフーは、リアル店舗を次々とM&A(合併・買収)し、細分化された流通業界を大きくまとめるプラットフォーマーとなるだろうかたや、地上の雄であるイオンとセブン&アイは、米国ウォルマートがDeath by AmazonとならないようAmazonに真っ向から闘いを挑み、米国で果敢に戦いを挑んでいるウォルマートのように、全力でこれを阻止することになるだろう。

  次に、Amazonは、世界通貨ともいえる「Amazon貨幣」をブロックチェーン、仮想通貨などの技術を使ってつくり上げ、グローバルスタンダードのサービスで日本での事業を拡大するはずだ。スマホなどのデジタルツールはAI (人工知能) を組み込み、VRなどの技術をひっさげ、楽天、ヤフーの2つの小国家に対抗するだろう。つまり日本で、グローバルスタンダードのAmazonと、ローカルの雄である楽天とヤフーという、総合通販を核とした三つ巴の闘いに、イオンとセブンの地上国家が阻止をするという戦いが繰り広げられことになるのだ。

  この世界戦の勝者は、縮小する人口の中で可能な限りの消費者データを得た企業となる。以上のことから、2020年はTOB元年になるという結論を導くことができる。

 数多くの小売経営者と話をしていると、業界再編の動きは待ったなしと感じることが多い。オペレーション効率(業務生産性)ばかりを伝統的に重んじてきた日本の流通業だが、「戦略戦」による勝敗が日本で繰り広げられる世界戦の覇者となる時代が来る外資系企業というのは、とくにエリアトップが変わるたびに戦略も変わり、戦略のコンシスタンシー(一貫性)がなく、資源分散が起きることが多い。これに対して、日本企業は調和を重んじるあまり、あれも、これもとなり当初立てた戦略がぼやけてしまい、これもまた戦略の集中化がなくなり資源分散を引き起こす。こうした、巨大企業が持つ弱点をいかに克服するかがポイントだろう。

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィール経営戦略コンサルタント。ハンズオン型事業再生、再建を得意とし、これまでに国内外で再建に成功した企業は50社を超える。最近の事例では、マイナス100億の赤字企業を一年で黒字化し、成長軌道に乗せるなど、アパレル企業再生の第一人者。執筆、講演も多く、代表作「ブランドで競争する技術」はアジアでも出版され知名度は高い。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

 

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