「ZOZO買収」後の世界を読む ヤフーも楽天もリアル店舗買収に進むこれだけの理由

河合 拓
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2大流通グループ蚊帳の外で繰り広げられる空中戦

ヤフーによるZOZO子会社化は、ヤフーの本格的な流通戦略の序章に過ぎない
ヤフーによるZOZO子会社化は、ヤフーの本格的な流通戦略の序章に過ぎない

 これに対して、ネットの世界で、まさに「イオン VS セブン」の様相を呈した闘いを、空中戦(インターネットの世界)で繰り広げているのが、楽天とヤフーである特に、ヤフーはソフトバンクの資本力を活用し、昨今ではZOZOを買収して我々を驚かせた。多角化を繰り広げている両者だが、その戦略は極めてシンプルである。それは、イオンやセブンが地上戦(リアル店舗)で繰り広げていることを、空中戦(インターネット)でやっている、ということである。

  例えば、ヤフーを例にすると、物販に関してはYahoo!ショッピングが総合通販で、ZOZOを傘下にいれることで、衣料品の顧客基盤を確保した。まさに「買えないものはない」状況だ。楽天は、いまさら説明は不要で、総合通販の代名詞だし、ヤフーは、ジャパンネット銀行とPayPayという貨幣、楽天は、楽天銀行と楽天Edyという貨幣をもっている。その他、旅行代理店からグルメサイト、両者は通信キャリア(楽天は、2019年10月以降に通信キャリアサービスを開始予定)まで保有し、ネットを使ったサービスは、もはやこれでもかというぐらい傘下に入れた。

  彼らの戦略はただ1つ。それは、人口縮小する日本のなかで、顧客の個人情報をできるだけ多く自社内に保有し、徹底して顧客を囲い込み、アップセル(より高額な商品を勧めること)、クロスセル(関連商品を勧めること)を繰り広げ「ゆりかごから墓場」まで、消費のすべてをグループ内に取り込むことだ。つまり、優良個客データを持っている企業を次々と買収し、グループ内でイオンやセブンのような「小国家」をつくることなのである。

  しかし、ヤフーと楽天に足りないものは、冒頭に述べたイオン、セブンの逆で、「地上戦」(リアル店舗)である。ここに、世界規模で「空中戦」と「地上戦」を見事に融合したAmazonが参入しているのが、バーチャル競争業界の世界地図の全体像だ。

  ご存じの通り、Amazonは米国でホールフーズを買収しスーパーマーケットに進出し、日本ではライフコーポレーションと提携し、「空中戦」と「地上戦」を融合したプライムナウを推進。さらにAmazonは、米国でAmazon Goを多店舗化しており、日本での展開も間近だろう。すでに多くのリアル店舗と提携してコインロッカーを設置し、私が予言する「受注場」、「体験場」、「受取場」の3つを融合し、オムニチャネルのお手本といえる展開をみせている。

 これは、単にリアル店舗にテレビカメラを設置し、顧客動線をウォッチするといったテクノロジー活用の事例がハイライトされる日本のリテーラーとはスケールが異なることはいうまでもない。

  彼ら、ネットガリバーの日本での売上を合算すれば軽く5兆 円(衣料品以外のサービスを含む)を超える。例えば、衣料品の市場規模は10兆円といわれているので、彼ら3強国の強さがどのぐらいかご理解いただけるだろう。しかし、そんな無敵のAmazonにも死角がある。これまでの論考を読まれた方はお分かりだと思うが、それが「Amazon銀行による金融サービス」である。

  実は、例えば、ファッションビルを展開する丸井などは、売上の大半は流通物販だが、利益の大半は金融ビジネスから得ている。彼らは、不動産と金融ビジネスを中心軸に添える戦略を打ち出し、7期連続の増収増益を果たしている。

  「モノ」と「金」は、必ず逆の動きをする。したがって、「物販」と「金融」を自社内に組み合わせれば、「一粒で二度美味しい」ビジネスができるし、さらに専用貨幣をグループ内で回流させれば、顧客を逃がさない生涯価値 (Life Time Value)を最大化することができる。そのことから考えると、Amazonの金融参入は時間の問題ともいえるだろう。

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