イトーヨーカドーGMS否定の抜本改革と、食品館分社化で首都圏スーパーマーケット戦略本当の始まり

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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食品館は分社化し、
首都圏グループスーパーと併合へ

食品館22店舗をイトーヨーカ堂から切り離し、収益性の向上を図る

 分社化する食品館22店舗はヨークマートやシェルガーデン、フォーキャストなどとともに成長戦略に掲げる首都圏食品戦略を推進するため、収益性の高いモデルへと転換を図る。

 この食品館は、当時も衣住低迷・食好調の中、そして首都圏でスーパーマーケット事業を展開する小売業を傘下に持つにも関わらず、イトーヨーカ堂だからできる食品スーパーがあるとの考えのもと、2010年に1号店をオープンし、当時は1年以内に10店舗、早急に100店舗体制をめざすと豪語していた業態だ。当初から、「総合スーパーの食品売場とスーパーマーケットはお客の求める機能が全く異なり、必要な品揃えもそれに伴うオペレーションも違う。その上、物件の取り合いとなっている都心部で早急に収益性の高いモデルで多店舗化するのは至難」という声が多かったが、案の定という状況が続いていた。

 遅きに失した感が拭えないが、食品館を分社化し、首都圏のグループ食品スーパー企業との併合を進め、①店舗フォーマットの確立、②商品供給プラットフォームの確立、③調達、製造、物流の効率化、管理部門の効率化を図る。将来的には、国内スーパーマーケットのなかでも屈指の実力を持つ、グループのヨークベニマルとの連携も視野に入れる。これはセブン&アイが重点戦略としておきながら、なかなか成果をあげられなかった首都圏スーパーマーケット事業の抜本的な再構築といえ、今後の展開が非常に楽しみと言えるものだろう。もちろん、①店舗フォーマットの確立、がその前提となることは言うまでもない。

 こうした改革を行うことで、イトーヨーカ堂では18年度比で22年度末に1700人の人員削減を見込んでいる。

 ようやく本気になったイトーヨーカ堂のGMS改革とセブン&アイの首都圏スーパーマーケット戦略。良い立地を抑えているだけに、そのポテンシャルは低くない。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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