成長しない問題社員が生まれる理由は「野放し」「勘違い」「反省なし」にある

神南文弥(じんなん ぶんや)
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失敗を失敗と認識させ、繰り返さないように指導する

 飯倉ひとりの責任とは言い切れないのかもしれないが、深刻ではある。部下の育成を考えるうえで、深い意味を持っていると思う。私が導いた教訓を述べたい。

こうすれば良かった!①
組織のマネジメントが急務

 「編集部」という部署があっても、上司が事実上、不在なのだから、組織として機能はしていない。個々の編集者が独自の基準で判断し、動く。その象徴が、飯倉ではないだろうか。数年の経験則に、目の前の仕事を必ず当てはめようとする。その経験則は間違いであるケースが多い。トラブルや問題が発生しても、上司がおらず、指摘もしないから、ミスがミスにならない。

 「組織のマネジメントが破たんするとこうなる」、という悪しき事例ともいえる。対策としては、早急にチームビルディングに取り組むことだ。部員が全員参加する10分ほどのミーティングを毎日行いたい。各自の仕事の現状や課題、トラブルを共有したい。飯倉のように嘘の報告ができないようにもするべきだ。例えば、外部とのメールのやりとりには複数の編集者が参加するようにする。打ち合わせにも、そのメンバーで加わりたい。外部スタッフと話し合う機会も増やすことで、担当者の嘘の報告をあぶりだす必要もある。

こうすればよかった②
工程の細部にまで関わり、丁寧な助言や指導をする

  人の育成は、仕事をあてがうだけでは不十分だ。20代の頃は、上司が1つずつの結果だけでなく、それぞれの工程の細部にまで関わり、丁寧な助言や指導をしない限り、仕事力は時間内で一定のレベルに達しない。

 野放しにしてあるがゆえに、飯倉は誤った判断を繰り返すなどしてやりたい放題になっている。意図したものではないのだろうが、「検証や反省なき仕事」を続ける。「自分が正しい」と信じ込み、何かを指摘されると感情論になる。人の意見には耳を傾けず、同じ過ちやミスを繰り返す。これら一連の状況を社長や役員は理解していない。これでは、飯倉のような“勘違いした20代編集長”が生まれ続ける。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

当連載の過去記事はこちら

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