若い女性の宅配物をのぞき見をするアルバイト店員に、なす術がないコンビニ店長

神南文弥(じんなん ぶんや)
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繋がる可能性も 厳しい態度と周知徹底が店の危機管理になる

 目撃者がいるとはいえ、確かな証拠がない中では、及び腰になってしまう店長の気持ちもわからなくはない。今回の事例から私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
真摯に向かい合い、理解を募る

  店長の三笠はどうしたら良いかわからなくなっており、有耶無耶の状態になっている。横田が非を認めないのだから、仕方がない一面はある。確かに疑惑のレベルではあるのだが、複数のアルバイトの証言をもとにすると、信ぴょう性は高いのかもしれない。やはり、あらためて本人に向かい合い、事情を詳細に説明するべきだろう。「同じような疑惑が続く場合、状況いかんでは辞めてもらう場合がある」ことも伝えるべきだ。後々のトラブルを防ぐためにも、現在に至った状況や話し合いの内容を記録しておこう。

 そして、アルバイト全員に、「横田と勤務シフトが同じアルバイトには、当日、疑惑の行為があれば、早急に報告をしてもらうように」周知徹底しよう。また、バックオフィスに宅急便の荷物を置く場所は、防犯カメラから見える場所として、徹底する。こうした店側の姿勢は、本人にも周囲にも必ず伝わる。店長としての「厳しい姿勢」を見せることは大切な教育であり、育成であり、店の危機管理になるのだ。

こうすればよかった②
過去に起きた事件を周知徹底

 今回に近いことは、実は過去に重大な問題になっている。2016年に、コンビニエンスストアで宅配便の荷物を出した女性が、伝票に記載した情報を悪用され、男性店員から恐喝行為を受けたという報道があった。女性は店の運営会社など損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

 報道によると、男性店員がスマートフォンで個人情報が記載された伝票を撮影し、女性に電話をかけて現金を脅し取ろうとしたり、肉体関係を求めたりしたという。女性は転居を余儀なくされるなど損害を被ったようだ。男性店員は、恐喝未遂などの罪で懲役6年の判決が既に確定している。

 このようなことは、新聞記事のコピーなどをアルバイトに回覧し、くどいほどに説明すべきだ。バックオフィスの掲示板には常時掲載しておきたい。店長として優柔不断な態度は絶対に避けるべきではないか。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

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