流通再編の衝動その9 ヤマダもビックもヨドバシも…不気味な凪続く家電量販店

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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アマゾンと同じ土俵に上がりながら、圧倒的に高収益なヨドバシカメラ

 一時期、アマゾンを筆頭とするEC勢の急拡大によって、家電量販店業界は再編が活発化するとみられていた。実際、ある時まではヤマダ電機などはアマゾンへの価格対抗に過剰なまでに躍起となり、業績を大きく落とした。だが、家電市場自体の伸び悩みに加え、EC勢との価格競争の沈静化といった要因などもあり、今のところ家電量販店は新分野の開拓によって競争を乗り切ることを最優先事項と考えているようだ。

 その一方で、アマゾンと同じ土俵に上がり、ネット通販強化に舵を切ったのがヨドバシカメラ(東京都)だ。「ヨドバシエクストリーム便」という、全品無料かつ即日配送のネット通販サービスを展開。取り扱う商品は家電にとどまらず、食料品や飲料、日用品、書籍とアマゾンの売れ筋と同じカテゴリーを扱い、すでにネット通販の売上高は1212億円と家電量販店最大規模にまで成長している。収益力でも家電業界で圧倒的な存在で、最新の「ダイヤモンド・チェーンストア」9月15日号によれば、同社の当期純利益は対前期比6.9%増の373億円。2位のビックカメラの3倍超という水準である。

 これに追随する格好でヤマダ電機も22年3月期までにネット通販の売上高を1000億円に引き上げる計画を明らかにした。日本経済新聞の報道によれば、現在の約300億円(19年3月期実績)から3倍強に高めるという。

 国内の家電量販店は今のところ、価格競争を避けながら、各自各様の戦略を進め、“アマゾンエフェクト”により経営破綻が相次いだ米国の家電量販店業界とは状況が違ってきている。ただこの先は消費増税、それに伴う反動減の影響が懸念されるなど予断を許さない状況だ。このところ続く凪状態は、大再編の予兆かーー。(次回へ続く)

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