人員効率化と働き方改革の犠牲で、理不尽な長時間労働に苦しむ中堅

神南文弥(じんなん ぶんや)
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万引き体制は社員育成と表裏一体だ

 長時間労働は、現在の雇用問題の大きなテーマである。迅速な対応ができている会社とそうでない会社の差は大きい。今回は、後者のケースと言えよう。私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
「なぜ、この人はここまで残業時間が増えているのか」を検証しよう

 残業は、特定の社員に集中する傾向がある。仕事をきちんとしている人も、ほかの社員をフォローすることになり、残業が増える場合があるのでないか。この場合、「困ったときはお互い様」と問題の本質をごまかさないようにしたい。今回で言えば、経験の浅いディレクターの仕事に何らかの問題はあった可能性が高い。そのあおりを受けているのが、吉村なのだ。

 残業を減らすためには、このような真相に踏み込まないといけない。だが、理由や背景を事実にもとづいて調査し、改善に向けて具体的な行動をとる会社は少ない。たとえば、「残業時間を1か月で30時間にしよう」と目標を掲げているケースはあるが、「なぜ、この人はここまで増えているのか」と踏み込んでの検証はあまりしていない。効果がすぐに現れなくとも、「検証している」姿勢は社員たちに必ず伝わる。そこから、意識が変わり始めるのだ。

こうすればよかった②
役割分担、権限と責任を明確にして、互いに意識化を

 大勢で1つの仕事に取り掛かる場合、それぞれの社員の役割分担、権限と責任を可能な限り明確にして、話し合いを通じ、互いに意識化をしたい。そして、正しく機能しているかも、1∼2週間ごとに会議やミーティングなどの場で確認したい。ふだんから、

 皆で「役割分担、権限と責任」について話し合い、実態に即したルールを作りたい。本来、リーダーはこのようなマネジメントをするべきだが、この事例ではできていない。結局、吉村のような使命感や責任感を持つ者が、損をするようになっている。ついには、退職をするようにもなりかねない。知らないところで、部下を潰している一例と言えるのだ。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

当連載の過去記事はこちら

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