ほかの業態に比べて上位寡占化が緩やかな食品スーパー(SM)業界だが、合従連衡の動きは依然として活発だ。大手チェーンやリージョナルによるM&A(合併・買収)のほか、異業種間のM&Aや提携も行われるなど、勢力図は混とんとし始めている。M&Aが経営数値に与えた“成果”と、経営環境の変化を踏まえた今後のM&Aの動向について考察する。
※本稿では業務提携や資本提携も広義のM&Aととらえ言及する HD=ホールディングス
3つに大別されるM&Aのパターン
国内SM市場における合従連衡の動きの中心にいるといえるのが、リージョナルチェーンである。
まず、グループAとしては、新日本スーパーマーケット同盟を形成するアークス(北海道)、バローHD(岐阜県)、リテールパートナーズ(山口県)の3社が代表格といえよう。アークスをはじめ、各社で規模拡大のスピードが速いことが特徴で、3社の2022年2、3月期の連結売上高を単純合算すると1兆5228億円に上る。仕入れ、商品開発、資材調達などの分野で規模のメリットを生かすほか、スマートストア化に向けたDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略、各社のノウハウを生かした物流戦略、システム共有による投資効率化が進められている。
グループB(地域密着M&A型)の主なプレーヤー・事例としては、エイヴイ(神奈川県)を買収し、そのノウハウをもとにディスカウントストア(DS)「フーコット」を立ち上げたヤオコー(埼玉県)や、「関西スーパー」「イズミヤ」「阪急オアシス」を束ね関西最大のSMチェーンとして牙城を築きつつある関西フードマーケット(兵庫県)などが挙げられる。
グループBは、エリア内ですでに浸透しているストアブランドをM&Aを通じてより強固にすることで、競合他社の参入を抑制する効果や、店舗運営に関わる物流や販促、店舗巡回コストの削減といった効果を生み出している。
次にグループC(異業種広域M&A型)の主人公はSMではなくドラッグストアDgS)だ。
たとえば、商勢圏内において年商100億円未満の中小SMのM&Aを繰り返し、その店舗網と生鮮を中心とした食品の販売ノウハウを手中に収めるクスリのアオキHD(石川県)はその代表格だろう。
SM企業によるM&Aの「成果」
続いて、SMによるM&Aの「成果」を分析するため、グループAのアークスとリテールパートナーズ、グループBのアクシアルリテイリング(新潟県)とアルビス(富山県)を例にとり、12年度と21年度の財務諸表の内容を比較してみた。
リテールパートナーズは、店舗の増加数182店、売上高伸長率290.8%と、事業規模は最も拡大したが、1店当たりの平均売上高の伸長率は
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