人手不足で力関係が逆転 賞味期限切れ食品の“盗み”を黙認するコンビニ店長

神南文弥(じんなん ぶんや)
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問題は問題として指摘し、納得してもらうことに力を注ごう

 人手不足が深刻なコンビニエンスストアでは、雇う側と雇われる側の関係が逆転しつつある店が増えている。今回の事例から私は、次のような教訓を導いた。

こうすればよかった①
問題は問題として指摘する

 賞味期限切れの商品を持ち帰り、食べるのは後々、トラブルになる可能性がある。例えば、体の具合が悪くなったりするかもしれない。持ち帰っている姿をお客が見ると不信に感じたり、不快な思いになったりすることもありうる。その意味で、店で責任を持って廃棄しなければならないし、そのように本部はルールを定めている。

 今回の店は、それをしていない。注意をしたことで、従業員は不愉快に思い、辞めてしまうかもしれない。アルバイトの人手が足りないため、店長が「辞められては困る」と考えるのも無理はない。

 だが、問題行為を黙認してしまうと、アルバイトたちに間違ったメッセージを送ることになる。それが積み重なると、ほかのアルバイトらも同様の行動を取るようになる。そこから、新たな問題に発展する場合もあり、まずは毅然とした態度で、ルールの徹底を行わなければ、先はないのだ。

こうすればよかった①
マメに雑談をすることでリスクマネジメントを

  店長のマネジメントで、すばらしい部分もある。例えば、アルバイトから問題行為を素早く聞き出した。これは、なかなか難しいはずだ。アルバイトの中で人間関係や上下関係、しがらみがあるからだ。アルバイトたちで1つのコミュニティーが出来上がり、問題行為が隠されてしまう場合すらある。おそらく、店長はふだんからアルバイトたちと雑談などをマメにしてきたのだろう。

 実は、これがいざというときに「保険」になる場合がある。たわいもない話で構わないから、機会あるごとにしたい。1回につき、3分でいいのだ。あるいは、挨拶をした直後に1分話すだけでも、効果はある。ささいなことであるが、アルバイトの心を掌握するうえで欠かせない試みでないか。

 欲を言えば、賞味期限切れの商品を持ち帰るアルバイトとも前々から話し合っておくべきだった。多少はしていたのかもしれないが、ここまで数が多いと、コミュニケーション不足の疑いがある。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

当連載の過去記事はこちら

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