落日のGMSその6 名を捨てて実を取ったユニー

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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「旧経営陣は最後に最良の判断をした」

 だがその一方で、GMS各社の業績不振が続くなか、「PPIHの傘下に入ったのは結果的に良かったのではないか」(流通大手OB)という声も少なくない。

 マイカルやダイエー(東京都/近澤靖英社長)がイオン傘下に入ったように経営が行き詰ったからではない。伊藤忠商事がファミリーマートとユニーの間に入ってユニー経営陣を説得してきたとはいえ、ユニーは自ら選択してファミリーマートと経営統合し、最終的にPPIHの傘下に入った。

 これはある意味で、“血を流さない変革”を成し遂げたとも言え、「ユニーの旧経営陣は最後に最良の決断をした」(同OB)との評価もあるほどだ。この決断が遅れ、経営状態がもっと悪化してからでは、店舗や人員の大胆な整理という憂き目にあったであろうことは想像に難くない。

ドン・キホーテ
ダブルネーム店舗の生鮮食品売場。いたるところでドンキ流の売場づくりがなされている


 現在、ユニーではGMS業態である「アピタ」「ピアゴ」の業態転換が着々と進んでいる。PPIHの大原孝治社長は、2023年度までにユニーの店舗約180店のうち100店を(ドンキとユニーの)「ダブルネーム店舗」に転換する方針を掲げている。

 昨年に業態転換したユニーの6店舗は、転換前に比べ売上高は約2倍、客数・粗利高は70%以上の伸びを示している(19年6月期第3四半期決算より)。ある食品スーパー企業の首脳は「(ダブルネーム店舗は)今風にアレンジされた本来のGMSの姿だ」と絶賛する。

 PPIHはユニーの完全子会社化にあたり、ドン・キホーテ出身の関口憲司氏を新社長に起用した。関口氏は、大型フォーマット「MEGAドン・キホーテ」を確立し、経営破綻してグループ入りした長崎屋を再建した実績を持つ。転換した店舗に「魂」を入れるのはこれからが本番になると見られている。

 ドン・キホーテの創業者である安田隆夫創業会長の「今後は(店舗閉鎖などで)GMSのオーバースペースの解消が進む。まさにわれわれのチャンスである」という言葉が思い起こされる。この先、ドン・キホーテの隆盛が続くかは未知数だが、今のところ安田創業会長の予言通りになっている。

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