売上640億円突破!オイシックス・ラ・大地が積極的なM&Aを急ぐ理由とは?

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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強みを生かして 他社との相乗効果をねらう

 

NTTドコモとの新サービス「dミールキット」
NTTドコモとの新サービス「dミールキット」

 まず、4月に子会社化を発表したのが、米パープル・キャロット(Purple Carrot)だ。同社は、ビーガン食ミールキットの宅配を主な事業としている。ビーガン市場はアメリカで拡大の一途をたどっているが、オイシックスは日常生活で部分的にビーガン食を取り入れるライフスタイル「パートタイムビーガン」が日本でも流行る可能性があると睨んでいる。パープル・キャロットを子会社化することで日本でのビーガン市場開拓を図るとともに、ビーガンと和食を組み合わせた新たな健康食の開発を行い、グローバル展開する考えも明らかにしている。

 さらに5月には、米国発の食料品チェーン「ディーン&デルーカ(DEAN&DELUCA)」の日本事業を展開するウェルカム(東京都/横川正紀社長)の第三者割当増資を引き受ける資本提携により、持分法適用関連会社化することを発表した。ディーン&デルーカは、チーズやワイン、オリーブオイルなどこだわりの食材を提供するセレクトショップのほか、カフェも展開。若い女性を中心に絶大なブランド力を誇る。オイシックスはミールキットの宅配、ディーン&デルーカはリアル店舗での総菜やグロサリー販売に強みがあるため、相互のチャネルでの販売や共同での商品開発によって、互いの相乗効果を図るつもりだ。

 オイシックスはこのほか、通信大手NTTドコモとの協業も同じく5月に発表。ドコモのさまざまなサービスを利用できる「dアカウント」会員向けの新しいミールキット宅配サービス「dミールキット」を197月より開始する。dミールキットでは週に1度、5日分のミールキットメニューを提案し宅配する「dミールキット定期便」や、最短5分で調理可能なオリジナル商品の「おいしい5min.」などを提供する。利用によってdポイントも貯まるため、若年層が多いドコモの会員基盤を活用して新たな客層の取り込みをねらう。

 

国内リアル店舗と海外サブスクリプション宅配へ事業拡大

 あらためて上記3社との提携内容を整理すると、オイシックスが大きく2つのメリットを追求していることがわかる。1つは、オイシックスの強みである「食のサブスクリプションサービス」を生かせること、もう1つは、リアル店舗に強いDEANDELUCAや若年層が多い会員基盤をもつNTTドコモなど、オイシックスにない強みがあり、かつその強みがオイシックスの今後の事業拡大に役立つことである。

 現在、オイシックスは主要3ブランド「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の国内定期宅配サービスを中心とした事業を展開しているが、上記3社との協業やM&Aによって国内のリアル店舗事業や海外でのサブスクリプション型宅配サービスの拡大を進めることが可能になった。生鮮宅配マーケットそのものの市場規模は急拡大しているとはいえまだまだパイは小さい、その一方で有力企業による市場参入は活発だ。オイシックスとしては、横のM&A(同業)がほぼ一巡したいま、周辺マーケットの掘り起こしを他社との連携を通して行うにより事業拡大を実現し、いち早く国内で追随を許さない存在になろうとしている。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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