カンブリア宮殿でも話題!絶好調サミットの秘策 「成長ストーリー」とは

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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モデル店は売上高、客数ともに2割増!

 成長ストーリーは設定しただけで、すぐに実践されるわけではない。サミットが同時に進めてきたのが従業員の意識改革だ。18年2月期から3カ年の中期経営計画(中計)において、初年度は「変わる~まず自分が変わる、社風も変える~」、次年度は「オリジナリティの発揮~商品・売場・サービスも変える~」と毎年テーマを設置し、従業員の自発性の発揮を促してきた。

 現在、サミットのなかでも成長ストーリーをよく回せているモデル店舗されるのが、17年3月にオープンした「王子桜田通店」(東京都北区)だ。同店の19年3月期の売上高は対前期比27.7%増、客数は同21.4%増という驚異的な数値を叩き出している。

 そして特筆したいのが、同店から東約800mにある自社店舗の「王子店」も、絶好調な新店が近くにある状況にもかかわらず、売上高が同2.4%増、客数が同2.3%増と業績を伸ばしている点だ。つまり、自社からではなく他社から需要を奪取し成長を達成していると言えよう。

 竹野社長は「同じ部門、店舗の従業員同士はもちろん、店長を中心に異なる店舗同士でも互いの成功事例を共有しあう文化が醸成されつつあり、そのことが両店の成長を実現している」という。20年3月期はこの成功事例を共有する「共有力」を強化する方針で、こうしたモデル事例が全店に波及されればサミットはまだまだ成長を遂げていきそうだ。

好循環を加速させる重要人物とは

 最後に、この成長ストーリーの大きな原動力となっているのが竹野社長本人だろう。新規・改装オープン前の朝礼では社長自ら従業員の前に立ち「一緒にこのお店を成功させましょう!」と鼓舞し、開店後は出入口の先頭に立って来店客に「いらっしゃいませ」とカートを渡す。パート・アルバイト従業員とも積極的にコミュニケーションを図り、全社的に実践している「ハイタッチ」(互いの手を合わせて行う挨拶)を交わす。

 このようにダイレクトに従業員に改革を呼びかける強力なトップのリーダーシップが、従業員の意識改革を喚起し、成長ストーリーの回転を加速させている。

竹野社長
メディア向けの記者会見で2019年度の方針を語る竹野社長。取材時にも熱心にサミットの方針を語ってくれる

 中計最終年度となる20年3月期のサミットの重点政策テーマは「Challenge to Be the One~ハイタッチな店への挑戦~」。単体業績では、過去最高となる営業収益2990億円、当期純利益は69億円を達成し、業界のなかでもオンリーワンの存在めざす。従業員一丸となってさらなる高みに臨むサミットから今後も目が離せない。

記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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