第5回 激務の上司が引き起こした、壮絶な職場いじめ

神南文弥(じんなん ぶんや)
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多忙なプレイング・マネージャーでも部下育成はできる

 

こうすればよかった①
部下を潰す「負」の連鎖反応を「正」に変える

 2人の直属上司は、店長である。本来は、フロアマネージャーの育成をしないといけない。だが、プレイング・マネージャーであり、大量の仕事を抱え込む。結果として、2人を野放しにしている。部下の育成を考えたことすらないフロアマネジャーの2人が「上司」になり、アルバイトの学生に教える。ノウハウや経験がまったくなく、心もある意味で成熟していないから、感情をむき出しにしてアルバイトに接する。そのプロセスでいじめが行われる。

 事例には、上司が部下を潰すという点では2つの構図がある。1つは、店長が2人のマネージャーを野放しにしていること。もう1つは、マネージャーがアルバイトを「いじる」こと。つまり、連鎖反応が起きているのだ。

 見方を変えると、1つの構図を多少なりともよい方向に変えると、新たな連鎖反応が起きる場合がある。そうなると、職場全体の空気が変わる。この繰り返しにより、「連鎖反応」を起こし、組織を少しずつ変えていきたい。それが、店長がするべき「組織マネジメント」なのだ。

 

こうすればよかった②
プレイング・マネージャーであっても、部下の育成はできる

 多くの職場で管理職は、プレイング・マネージャーとして奮闘する。実際は、プレイヤーのほうに重きを置き、マネージャーとしての仕事は少ない。裏を返すと、正社員の数を減らし、少人数態勢となり、各部署の過酷な業績目標は依然として存在し、社員間で過酷な競争が行われている。店舗間の競争が激しい外食チェーン店で、店長がマネージャーとして部下の育成に関わっている時間やエネルギーは少ない。

 これも一気にすべてを変えようとしないことだ。まず、2人のフロアマネージャーに1日数回、報告を求めることから始めよう。すると、何らかの連鎖反応が起きる。そこから店舗全体の雰囲気が変わり、いい方向に進んでいくこともありうる。「プレイング・マネージャーだから、部下の育成ができない」のではなく、「プレイング・マネージャーであっても、部下の育成はできる」のだ。ささいなところから変えると意外なほどに変わることはぜひ、心得ておいてほしい。

 

神南文弥 (じんなん ぶんや) 
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。

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