マックスバリュ北海道 代表取締役社長 出戸 信成
負け組SMから一転“既存店は成長して当たり前!”に変えた方法

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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「既存店売上高は、お客さまの支持と現場の元気を示すバロメーター」

既存店割れは96カ月中わずか2カ月

──マックスバリュ北海道といえば、既存店売上高がずっと成長し続けていることで評判です。定期的な改装に加え、何によってそれを実現し続けているのでしょうか?

出戸 トライ&エラーを繰り返してきたことにつきます。実は当社は03年から10年まで既存店売上高が割れ続け、負け組SMでした。縮小均衡に歯止めをかけるため、10年に新業態のザ・ビッグをスタートし、11年に企業トータルで既存店の前年割れが止まりましたが、SMは割れ続けていました。それがようやく止まったのは12年のことです。1店1店の課題を積み上げ、それを解決する施策を一つひとつ打っていくとともに、好調企業の共通項を探し出し、その施策を実行、それにドミナント出店と店舗年齢の若返り等を組み合わせるということを、愚直に行った結果です。

──直近96カ月中、わずか2回しか既存店割れがないというのは驚異的です。

出戸 かつて店長達は「人口が減っているのだから売上は上がるはずがない」という言い訳を口を揃えて言っていたものでしたが、今では「昨対を割ったら恥ずかしくて店長会議に出られない」と言うまでに意識が変わり、自信が付いています。

 2年ほど前に厚別店を改装しました。増床はせず改装だけだったのですが、商圏分析をして新しいMDを実験的に投入した結果、70%も売上高がアップしました。これは感度の高い商品へのニーズがあるにもかかわらず、それを当社の店が対応していなかったため、お客さまがほかの店に逃げていたのです。この成功体験も、従業員の多くに自信を与えることになりました。

 よくぞ、ここまで立ち直った、それが率直な思いです。

既存店売上を伸ばし続ける

──差別化MDはグロサリーだけでなく生鮮、それも総菜が軸になります。インストア加工だけでなく、アウトパックの質を高めることも大事だと思いますが、その点で取り組まれていることはありますか?

出戸 すべてをインストアでつくりきることはできません。インストアをベースにしながら、売れるアウトパックをどうつくるかということも継続的な課題です。有力企業の売れ筋商品を集め、ベンチマークし、試作してモニターテストを行い、販売するというサイクルを継続的に行っています。このサイクルの最適化を行うことで、アウトパックで安定した品質の商品を提供することを実現していきたいです。

──改装を強化するというお話ですが、どういう体制で取り組んでいるのですか?

出戸 改装サポートグループという専門部署があり、マネジャー以下5名で、アンケートから来店調査、売場づくり・オペレーションのサポートまで行っています。

──お客をさらに囲い込むマーケティング施策として何か取り組みたいことはありますか?

出戸 優良顧客の購買履歴を分析しています。優良顧客が購入しているCランク商品を削ると、そのお客さまは逃げてしまうわけですので、そういったことをきめ細かく分析し、改装に生かしていきたいと考えています。

──最後に、出戸社長が重視する指標について教えてください。

出戸 営業利益なども大事ですが、いちばんは既存店売上高です。既存店売上高を伸ばし続けると元気が出ます。やはりわれわれは小売業ですから、お客さまに喜んで買っていただくことが存在意義ですし、元気の源なのです。

 既存店売上高はずっと伸ばし続けているので、クリアすべき前年のバーはどんどん上がっているわけですが、より魅力的な店づくりを行い、売場を研鑽し続けることで既存店売上高を成長させ続けていきたいと考えています。

 

 

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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