社労士が教える働き方改革関連法、小売業が注意すべき「均衡待遇」とは!?

2019/05/09 05:00
竹前 彰(社会保険労務士法人 人形町事務所)

働き方改革関連法案が2019年4月より順次施行されています。同法案は、労働集約産業である小売業にとっても大きな影響を及ぼすものです。対策講座と銘打った本連載の第1回は、働き方改革とは何か、そして働き方改革関連法の内容と順守すべきこと、そして、小売業がとくに注意するべきことについて解説します。

働き方改革とは!?

 201846日に第196回通常国会に上程され、同年629日に可決成立、同年76日に交付されました。

 同法案は、「労働基準法等の一部を改正する法案」の内容を一部修正の上、包摂するものです。

 今回の改正は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じるのが目的です。

働き方改革の内容

 次に働き方改革の内容について解説していきます。大きくは1長時間労働の是正、そして2公正な待遇の確保、という2つの目的からなります。順を追ってみていきましょう。

 長時間労働の是正は以下の7つの骨子からなります。
①時間外労働の上限は、原則1ヶ月45時間/年360時間です。特別な事情によるいわゆるエスケープ条項についても年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間が限度となっています。
②月60時間を超える時間外労働割増率について、中小企業への猶予措置の廃止
③使用者に、年5日以上の年次有給休暇の付与義務
④フレックスタイム制の上限を3ヶ月に延長
⑤高度プロフェッショナル制度の創設
⑥長時間労働時の医師による面接指導の強化
⑦勤務間インターバル制度の普及促進

 2公正な待遇の確保、については、以下の2点が骨子です。
①パート・アルバイト・契約社員等のいわゆる非正規労働者と正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、均等・均衡ルールを整備(派遣労働者と派遣先の労働者との不合理な待遇の禁止に関し、均等・均衡ルールを整備)
②非正規労働者や派遣労働者について、待遇差の内容や理由等に関する説明の義務化

小売業がとくに注意すべきこと

 スーパーマーケット等の小売業においては、正社員とパートタイム等の短時間有期雇用労働者が混在しています。今回の働き方改革では、「事業主は雇用するパートタイム等の短時間有期雇用労働者の基本給・賞与・その他の待遇について差別的取扱をしてはならない」と定めています。

 その根拠となるところは、職務の内容が同一か否かです。

 職務の内容が同一か否かについては、まず「職務の内容が実質的に同じ」であるかどうかを判断し、その上で「責任の程度」が著しく異なっているか判断します。

 これが全て同じであるならば、正社員とパートタイム等の短時間有期雇用労働者に対し、基本給・賞与・その他の待遇について差別的取扱をしてはならないのです。

  上記のように職務内容がすべて同一でない場合があります。仮に、職務内容がほぼ同一であるが、責任の程度が正社員の80%程度である場合、原則パートタイム等の短時間有期雇用労働者の給与等を正社員の80%前後に設定しなければなりません。50%、60%にすることは難しくなります。これを「均衡待遇」と言います。労働時間も同じ考えで、もし職務内容も責任の程度も同一で、労働時間が正社員8時間、パートタイム等の短時間有期雇用労働者が6時間である場合は、給与等を75%前後に設定しなければなりません。

  正社員とパートタイム等の短時間有期雇用労働者との間で賃金や待遇等で差をつけたいのであれば、明確な職務内容の違いや労働時間の違いを立証しなければなりません。

  今後、会社としては、賃金体系(特に基本給・手当・賞与)の見直し、従業員1人1人の詳細な職務内容の精査、それからの配置転換や労働時間の変更等を行う必要があるでしょう。

 

参考文献 労働新聞社 「まる分かり平成30年働き方改革関連法」

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