「給与」よりも「気持ち」で仕事を選ぶ!
傾向が強まっている、現代の若者

2019/04/11 05:00
斉藤永幸

全4回からなる本特集では人手不足時代の1つの処方箋、離職率をいかにして下げるかに焦点をあてる。小売業界でも問題になっている「若手社員の離職率を下げる!」のがテーマだ。月並みな質問だが、離職率が高いと何が悪いのだろうか?人手不足以上の副作用が企業に起こることをまずは認識したい。

離職率はなぜ重要な指標なのか

 近年、離職率という言葉が話題になることが多い。そもそもなぜ、離職率が重要になってきているのか。

 採用コストが安かったのは今や昔。安倍政権の発足後、急速に求人倍率は増加し、平成3012月で有効求人倍率は1.63倍。2009年、2010年あたりでは0.5倍程度だったのに比べると、3倍以上だ。
(参照https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0301.html

 それに伴い、一人当たりの採用コストは急上昇している。

 人材採用では求人広告が中心になるが、大手求人サイトを利用した場合、掲載期間2週間で120万円~150万円かかる場合もあり、そもそも良い人材を得られる保証もない。また、近年では即戦力採用の獲得競争が激化しており、経験の浅い人や、未経験者を採用せざるを得ないシーンも増えてくる。そうなると教育期間も増え、人材コストはさらに増すことになる。

 もう一つ考えなければならないのが、イメージの悪化だ。離職率の高い企業は、ブラック企業というイメージを持たれてしまうことも多い。どんなに堅実な経営を行っていても、離職率が高いと、企業はダメージを受けてしまうのだ。特にイメージに敏感な一般消費者と直接ビジネスを行う小売企業の場合は深刻だ。近年では、退職した人が口コミで企業の実態を共有するサイトなども出てきている。退職者を出すことは、それが企業のリスクに直結する時代になったのだ。

 モラルの低下も問題だ。離職者が出た職場は、多くの場合モラルが低下する傾向にあるからだ。仕事に対するモチベーションが下がるのはもちろん、退職者からの引継ぎなどで業務量が増大。それが原因となって生産性が低下してしまうのだ。さらに「あの人も辞めたのだから、自分も」という具合に、離職者が連鎖する場合も多い。そうなると社員の帰属意識は低下し、社員のロイヤリティが下がることで、仕事に対するモチベーション、さらにはモラルまで低下していくのである。

 そこで重要なことが、「離職率をいかに低く抑えるか」だ。

 ただ、離職率を低くする、といっても難しい。例えばIT企業のサイボウズは、離職率が28%だったのを4%に下げることに成功した。そこで行ったのは、多様なワークスタイルの導入である。仕事を重視する人、仕事とプライベートを両立させたい人、など様々な価値観を持った社員が選択肢を持ち、自由な勤務形態で働けるようにしたのである。

 しかしこうした制度は、IT業界だからこそ可能、とも言える。小売業界のように、実店舗の運営で多彩な働き方を実現するのは難しい。どうしても時間の拘束は生まれてしまい、それを社員間で差をつけてしまうと、また別の問題が生まれるからだ。

 そのためこうした成功事例をそのまま導入することは、流通業界では難しいのが現状だ。ではそれぞれの店舗単位、もしくは小規模な改革で離職率を下げることはできないのだろうか。筆者はそうは考えない。できることはまだまだ多い。

 

離職理由から見る、離職の防ぎ方

 まずは、若者が、仕事に対して何を求めているのか、その変化を踏まえることからはじめたい。

 仕事とは辛いことがあり、厳しい面があり、だからこそ給与がもらえる–– そう考える若者は相対的に減少傾向にある。また、給与が高ければよい、という風潮も徐々に薄れてきているようだ。

 ここ数年、若者の就職・転職活動の支援の仕事をしていて感じるのが、自分が働いていて「気持ちよい」と感じるかどうかを非常に重視しているということだ。それを端的に表しているのが、退職理由である。

 転職サイト大手のリクナビネクストの『退職理由のホンネランキングベスト10』(https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/)によると、1位に「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」、2位「労働時間・環境が不満だった」、3位「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」、などが並んでいる。

 注目すべきは1位の上司・経営者、3位同僚・先輩・後輩、さらに6位に「社長がワンマンだった」、7位の「社風が合わなかった」、などである。いわば人間関係を理由にした退職が非常に多いのだ。これらをすべて足すと49%にもなる。つまり退職の過半数が、人間関係を由来とした退職なのである。給与や労働条件よりも、人間関係が退職の引き金になっているのだ。

 つまり離職者を出さないためには、人間関係をいかに円滑にするか、が重要になってくる。特に上司などとの人間関係は重要だ。ここを円滑にすることができれば、離職者は大きく減らすことができるのである。

 では上司は部下に対し、どのように接するべきなのだろうか?次回、解説する。

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