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1月に台湾進出のロピア、飲食の新業態出店のねらいと今後の戦略

 1月17日、いよいよロピアの海外進出1号店が台湾でオープンする。同店では、食品スーパーとともに飲食業態も出店する計画だ。その背景にあるロピアの海外事業の成長戦略と、同社の外食事業の新たな動きを伝える。

2つの飲食の新業態と
話題の店「黒泉」を併設

「ららぽーと台中」に出店する「LOPIA」のイメ―ジ

 ロピアの台湾1号店が出店するのは、三井不動産(東京都)が台湾に初めて開業する「ららぽーと」業態である「三井ショッピングパーク ららぽーと台中」の南館地下1階だ。

 三井不動産のニュースリリースによると、食品スーパー「LOPIA」では肉の専門店出身ならではの強みを生かし、こだわりの精肉や自社生産のウインナー、ハムなどの加工肉を販売するほか、生鮮食品やプライベートブランド商品など豊富な品揃えを提供するという。

 注目したいのが、同店がロピア直営の飲食業態を併設するという点だ。イートインコーナーでは、2つの新業態「肉処 肉源」「日本橋 魚萬」を導入。それぞれ、店頭で扱う素材を使い肉料理、海鮮丼を提供する。

イートインコーナーで展開するという「肉処 肉源」(左)「日本橋 魚萬」(右)のイメ―ジ

 さらに、千葉県松戸市の「ロピア松戸店」内に出店し予約困難な店として話題を集めた割烹料理店「黒泉」(現在は閉鎖)が、「そのまま移転オープン」するという。

 この飲食業態の出店は、ロピアが数年前から戦略的に準備を進めてきたものである。

 ロピアは2019年に新会社eatopia(イートピア:神奈川県)を立ちあげ、外食事業に参入。同年には、前出の「黒泉」のほか、東京・銀座に高級焼き肉店の「銀座山科」を開業した。さらに20年には、東京・小石川にあるミシュラン1つ星獲得のステーキハウス「小石川中勢以」の営業を、運営会社からの一部事業譲渡により手掛け始めるなど、一見、主力事業の食品スーパーとは直接結びつかないような高質な飲食業態を展開してきた。

日本の食文化を伝えるべく
まずは国内でブランドを醸成

 このねらいについて、eatopiaの山科博昭代表取締役は自社のホームページ上で公開されている動画の中で次のように語っている。「ロピアには日本の食文化を海外でも発信したいという野心がある。そのために外食は切り離せない存在で、かつブランド力が必要となる。そこで『食べログ』の高評価店やミシュランの星付きのような店を国内で磨き上げたうえで、アジアに持っていくことが得策であるとeatopiaを創業した」。

 つまりロピアは、強みとする精肉を生かして、日本の和牛さらには日本の食文化の発信することで海外での成長戦略を描いており、これまでの一連のeatopiaの施策はそのためにつながっていたということだ。
 
 実際、eatopiaの手掛ける飲食店は国内で高い評価を得ている。「小石川中勢以」は、神戸牛などの和牛を熟成させて提供する専門性の高さや味への評価から「日本で唯一のステーキというジャンルにてミシュランガイド1つ星を8年連続取得している」(同店公式のWEBページより)という。

「小石川中勢以」
「小石川中勢以」では、神戸牛などの和牛を熟成させて提供する

 また「銀座山科」については、2021年から2年連続で、グルメレビューサイト「食べログ」掲載店のうち、ジャンル別に評価点数上位100店が選ばれる「焼肉TOKYO百名店」に選出されている。

 このように飲食のノウハウやブランド力を国内で培い、満を持して出店した台湾・台中の1号店は海外でどのように評価されるのか、注目の集まるところだ。

横浜市に中価格帯の
焼き肉店を開業

 一方、ロピアは国内の外食事業でも新たな動きを見せている。

 eatopiaは、「銀座山科」「小石川中勢以」のほか、22年4月に銀座四丁目交差点角という一等地にある商業ビル内に開業した「山科本店」を運営する(そのほかイタリアンとビストロ業態も展開していたが、無期限休業中と22年12月に閉店となっている)。

 このようにこれまで高級業態を出店した同社が22年8月、神奈川県横浜市に中価格帯の焼き肉業態「ギュウトピア」をオープンしたのだ。

「港北TOKYU S.C.」5階のレストランフロアにオープンした「ギュウトピア」

 「ギュウトピア」が入るのは、横浜市営地下鉄「センター南」駅から南西約100mにあるショッピングモール「港北TOKYU S.C.」5階のレストランフロアだ。同モール地下1階には食品スーパーの「ロピア港北東急SC店」が入ることから同地を出店地に選んだと考えられる。

3つ価格帯の業態で
外食事業を拡大へ

 山科社長は中価格帯業態の出店の背景にある、ロピアグループの新たな動きについて次のように語っている「(ロピアグループは)外食事業をより大きくするべく外食の会社を再編する。今後は、高級・中価格・廉価の大きく3つの業態でグループ分けし、ロピアグループがそれをト―タルで持つ体制となる」。このうちeatopiaは高級業態を担う会社となり「アジアに日本の食文化を輸出するためのブランドをつくる拠点となることをめざす」という。

A5等級の黒毛和牛を
リーズナブルに提供

 まず、新たにオープンした中価格の「ギュウトピア」とはどのような店なのか。22年12月下旬の週末に訪問すると、夜間営業開始時間の17時を5分ほどしか過ぎていないにも関わらず、すでに多くの席が埋まっている状態だった。

 店の雰囲気は落ち着きのあるお洒落な焼肉店といった感じで、ファミリー層がお客の中心である。

 夜間のメニューは、アラカルトのほか全14品の飲み放題付き焼き肉コースを6000円(税抜)で提供する。コース内の肉メニューは、生肉2点盛り、焼き物・塩4種とタレ3種、トリュフ入り焼きすきで、注文用の電子タブレットでは「当店の黒毛和牛は全てA5ランクを使用しています」と紹介していた。

焼き物の塩4種盛り(2人前)
すき焼きは、トリュフ入りの卵に絡めていただく

 実際に食事をすると、肉の味も質も満足で、よい肉を手頃な価格で楽しめた。来店客の様子を見ると、慣れた様子で食事をしている人が多い。以前に利用し再び来店していると見てとれ、再来店したいと思える評価を得ているようだ。

今後は食品スーパーと
ともに出店も?

 「ギュウトピア」では、食品スーパー「ロピア」との連携も見てとれる。たとえば、テーブルに設置されているペッパー、ソルトは、「ロピア」でも販売している同社の直輸入品だ。提供する黒毛和牛についても「ロピア」と同じ施設内で営業していることからも、共同で仕入れたり、融通したりしている可能性は高い。

 これまでの高級業態では「スーパーのロピアと仕入れは別々で行っている」(銀座山科で食事した際の従業員の方との会話より)そうだが、中価格や廉価な業態であれば「ロピア」と連携を図れる部分も生じてきそうだ。「ギュウトピア」のように、食品スーパーの店舗に併設したり、同じ商業施設内に出店したりしていく可能性も考えられよう。

 今回は中価格帯の新業態だったが、山科社長の話からすると近いうちに廉価な価格帯で食事ができる飲食業態の出店、または事業買収が予測される。このように海外だけでなく国内でのロピアの外食事業の動きからも目が離せない。